ハミングバード／ Hummingbird

2014/5/20 外国映画は行, 映画レビュー

ジェイソン・ステイサムと言えば、常に無双状態で敵を倒しまくる、冷静沈着、自信満々、クールなタフガイというイメージを持つ人が多いでしょう。

しかし、この映画『ハミングバード』のステイサムはひと味違います。
傷ついたような目をしてロンドンの街角を彷徨い、ドラッグとアルコールに溺れ、ホームレスや売春婦にシンパシーを感じながら“人生を取り戻す”ために必死に生きている…。

そんなステイサムが見せる微かな微笑みに、女心をくすぐられる女性も多いと思います。

＜STORY＞
英国特殊部隊の軍人だったジョゼフは、アフガンの戦場で犯した罪で拘束されていたが、軍法会議前に逃走。ロンドンの街角に身を潜め、ホームレス女性・イザベルと暮らしていた。ある日、ギャングに追われたジョゼフは、高級アパートメントの一室に逃げ込む。部屋の主がしばらく留守にすると知ったジョゼフは、そこで暮らし始める。ジョゼフはホームレス支援を行うシスター・クリスティナに頼んでイザベルを探すが、彼女は見つからず…。

＜Cheeseの解説＞
タイトルの「ハミングバード」とはアフガニスタンで使用された無人偵察機のこと。
ハチドリのように上空で旋回し、兵士たちの行動を記録している存在です。

ステイサム演じるジョゼフ・スミスは、アフガニスタンで特殊部隊の軍曹として戦っていた兵士です。
殺人マシーンとして訓練され、敵ばかりの戦場で非人道的な行動を行い、その罪を背負って逃げている人間なのです。

ロンドンで軍法会議にかけられるところを脱走し、そのままロンドンの街角で生きていた彼は、住人が留守にしている豪華なアパートメントに住み着きます。
そして、かつて身に着けた特殊技能を駆使してロンドンの裏社会でタフな仕事を始めるのです。

彼には、四人の大事な女性がいました。
自分が逃げたせいで貧しい暮らしを余儀なくされている、元妻のドーンと四歳の娘。
そして、街角で暮らしていた時に、荒んだ自分を支えてくれた売春婦のイザベル。
ホームレス支援を行っているシスター・クリスティナ。

しかし、イザベルは客の男性に暴力を振るわれ、殺されてしまいます。
シスター・クリスティナからその報せを聞いたジョゼフは、復讐を決意。
自分なりのやり方で、妻と娘、そしてシスター・クリスティナへの愛を表明し、自分なりの決戦に挑んでいくのです。。。

監督・脚本を務めたスティーヴン・ナイトは、本作が長編映画初監督となります。
『堕天使のパスポート』（2002年）、『アメイジング・グレイス』（2006年）、『イースタン・プロミス』（2007年）などの映画で脚本家として高い評価を得ていた彼は、ロンドンのホームレスたちの背景を調べているうちに、ホームレスの一割が元軍人だという事実を知ります。
戦場で命をかけて戦ってきた彼らが、街での生活に適応できなくなり、アルコールやドラッグなどに頼り、ホームレスとなることを余儀なくされてしまう…。

そんな事実をもとに、一流の兵士のような肉体を持つステイサムを主演に迎え、ひとつのRedemption（救済）の物語を作り上げました。
“戦闘”を生業にしてしまったがゆえに、心を傷め、平和な暮らしを贈ることができなくなってしまった男が見せるこの物語、ジェイソン・ステイサムの俳優としての新たな一面を知ることができる、本当の意味で、タフなオトコの物語です。

『ハミングバード』（100分／イギリス／2012年）
英題：Hummingbird
原題：Redemption
公開：2014年6月7日
配給：ショウゲート
劇場：新宿バルト9ほか全国にて
監督・脚本：スティーヴン・ナイト
出演：ジェイソン・ステイサム／アガタ・ブゼク／ヴィッキー・マクルア／ベネディクト・ウォン／ジャー・ライアン／ダイ・ブラッドレイ
公式HP：http://www.hummingbird-movie.jp/