【映画レビュー】レギオン / Legion
人類の味方であるはずの神や天使たちが、人類を滅ぼそうと襲いかかってくる様を描いた映画『レギオン』。
様々な宗教的モチーフにあふれた作品ですが、キリスト教の知識がそんなになくてもフツーに楽しめます。
歯をむき出して、壁や天井を四つん這いですごいスピードで這いまわるおばあちゃんとか、軽快なメロディとともにやって来て、手足がグキグキッと伸びて行くアイスクリーム売りの男とか、B級ホラーっぽい要素もたっぷり。
(むしろこのふたりのシーンに割かれた時間の長さから考えて、監督はむしろこっちの方が撮りたかったんじゃないかと邪推…)
それにしても、最近、「宇宙人と地球人の対立で、人類の方が悪役」とか(『アバター』、『第9地区』)、「人類の守護者であるはずの天使や神が人類を滅ぼそうとする」(本作)とか、今までの価値観を覆すような映画が急に増えているような気がするなぁ。。。
<STORY>
モハベ砂漠の中にポツンと佇むダイナー「パラダイス・フォールズ」。ここでウェイトレスとして働くチャーリーは、父親不明の子どもを妊娠していた。12月23日、ダイナーに老婆が客としてやってくる。最初はにこやかに談笑していた彼女だが、やがて歯をむき出してチャーリーに襲いかかって来た。老婆は異常なスピードで壁をはいずりまわり、客の喉笛を咬み切った。騒然とするダイナーだが、客のひとりが持っていた銃で老婆を撃ち殺し、その場はおさまる。その後、ダイナーに大天使・ミカエルを名乗る男が現れる。彼は人類を滅ぼそうとする神の命令に背き、人類を守るためにやってきたのだ。ミカエルが言うには、チャーリーのお腹の中の子どもこそが“人類最期の希望”だという。そして、ダイナーに天使に体を乗っ取られた人間たちが、次々と襲いかかる…!
<解説>
壮大な宗教映画なのか、B級ホラー・アクションなのか、ちょっと判断に迷うこの映画。
監督のスコット・スチュワートは、ホラー&ガンアクションの大好きな映画オタクなんじゃなかろうか…、と勝手に推測してみたりします。
天使の造形も、半裸でハープを持って歌い踊る…と言ったような可愛らしい姿ではなく、筋骨隆々の肉体にプロテクターを着けた、どちらかといえばギリシャ時代の軍人に近いような姿。
天使の羽も、鋼鉄の銃弾をはじき返すような威力のあるもので、かなりイカツい姿です。
そんなイカつい天使に体を乗っ取られてゾンビのような怪物になった人間たちが、“救世主”を宿した母親を、出産前に殺してしまおうと大挙して襲いかかってくるのです。
「神が人間を滅ぼそうとして天使たちを差し向ける」だけでも今までにない話なのに、「天使が人間を乗っ取り、ゾンビのようにする」という設定もなかなか。
まあ、「自業自得の人間たち、自分で自分の首を絞めてるのはキミたちなんだよ」というメタファーだと捕えることもできるのでしょうが。。。
それにしても、私はいわゆる日本人的な“八百万の神”に頼っちゃう人間で、キリスト教には詳しくないのですが、この映画はキリスト教信者の方にはどう映るのでしょうか?
神が人類を滅ぼそうとし、天使が人間に襲いかかり、新しい救世主が誕生する話…、これにバチカンとかがどう反応するのか、ちょっと知りたい所です。
そう言えば、この映画で大天使・ミカエルを演じているのは、以前バチカンを怒らせた『ダヴィンチ・コード』にも“狂信者”シラス役で出演していたポール・ベタニー。
色素の薄い白皙の美貌が、天使にぴったりです。
それにひきかえ、大天使・ガブリエルを演じたケヴィン・ドュランドはまた対照的なイメージ。
浅黒い肌に黒い髪、太い眉といった容貌で、ネイティヴ・アメリカンのような雰囲気でした(実際のケヴィンはカナダ出身らしいですが)。
“天使”というよりは、“軍神”のようです。
そう言った意味で、今までのいろいろな固定概念を覆すこの『レギオン』。
私のような宗教的知識がない人間でも十分楽しめます。
ホラー映画的に観るのもよいでしょうし、宗教的にいろいろ解釈しても楽しめるはず。
いろいろな解釈が可能な、注目に値する怪作ではないでしょうか。
『レギオン』(100分/アメリカ/2010年)
原題:Legion
公開:2010年5月22日
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場:新宿バルト9ほか全国にて
監督: スコット・スチュワート
出演:ポール・ベタニー/ルーカス・ブラック/デニス・クエイド/テリーズ・ギブソン/エイドリアンヌ・パリッキ/ケヴィン・デュランド
公式HP:http://www.legion.jp/
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