【映画レビュー】ダイバージェント ／ Divergent

「トワイライト」シリーズや「ハンガー・ゲーム」シリーズなど、アメリカのヤングアダルト小説を原作とし、特殊な環境でその能力を発揮する若き美少女たちの愛と戦いを描くシリーズを多く配給しているKADOKAWA。
本国では圧倒的なヒットを記録していたりするものの、原作になじみのない日本では大ヒットは難しいこういったシリーズですが、的確なマーケティングによって少女層には一定の支持を得ています。

このKADOKAWAで、新たに登場したシリーズが、この映画『ダイバージェント』です。

『ファミリー・ツリー』でジョージ・クルーニーの娘を演じ、ハリウッド映画祭スポットライト賞などのアメリカの映画賞を数多く獲得したシャイリーン・ウッドリーが、大きなまるい目を更に大きく見開いて、“異端者”ダイバージェントの少女をパワフルに演じています。

最終戦争から100年。生き残った人類は性格診断テストにより人間をという5つの共同体に分け、共同体を作って暮らしていた。そしてある年齢を迎えた子どもたちは、診断テストを受けた後、“選択の儀式”で自分が属する共同体を決める。【無欲】の共同体で育ったベアトリスは、診断テストでどこの共同体にも属さない“ダイバージェント”と診断される。選択の儀式でベアトリスは【勇敢】を選択し、共同体の一員として訓練を受け始めるが…。

最終戦争から100年後、人類が【勇敢 ドーントレス】【高潔 キャンダー】【平和 アミティー】【無欲 アブネゲーション】【博学 エリュダイト】という5つの共同体（ファクション）に別れて暮らす近未来を描く本作『ダイバージェント』。

【無欲 アブネゲーション】という共同体で生まれ育ちつつも、性格診断で5つのどれにもあてはまらない“異端者（ダイバージェント）”と診断され、自分がダイバージェントであることを隠して【勇敢 ドーントレス】の共同体に新しく入った少女・トレスの成長を描いています。

ベロニカ・ロスのベストセラー・ノベルを映画化した本作、上記の設定を受入れられるかどうかがキモと言えるでしょう。
人類全体が5つのファクションに別れる、という壮大なスケールの話を描いているかと思いきや、描かれているのはアメリカのシカゴだけだったりして（全人類の中で生き残った人だけがシカゴに集まっている、と言う設定にしても）、思いのほかスケール感は小さかったりして…。
どうもその世界観は、人間の実際のあり方に則した話と言うよりは、“小説家の頭の中で都合良く作り上げられた世界”という気がしてしまいます。

そんなふうに説得力が弱さを感じさせるあたりが、どうも「ハンガー・ゲーム」シリーズには及ばない点かもしれません。

でもまあ、ティーンを主役にしたアクションムービーとしては、きっちりツボを押さえているのではないでしょうか。
可愛く凛々しいシャイリーン・ウッドリー、思い詰めたような眼差しが女性の心を溶ろかせそうなテオ・ジェームズ、二人が反発しながらも惹かれあい、恋に落ちていくあたりはラブストーリーとして充分味わえます。
さらに、軍事・警察などの役割を担う【勇敢 ドーントレス】の一員としてトリスたちが受ける訓練や、ビルとビルの間のワイヤーを滑車で滑り抜けていくシーンなどは、アトラクションムービーとしても楽しめます。

ケイト・ウィンスレット、アシュレイ・ジャッド、マギーQら、若い俳優たちを脇で支えるオトナの女優たちも貫禄たっぷり。
特にケイト・ウィンスレットは、こういう映画に出演するイメージがあまりない女優さんなので、なかなか貴重な姿を見ることができます。

でもまあ、不満があるとすれば、
「で、ダイバージェントって一体なんなの？　どういう力を持っているどういう存在？」
というのが、原作を読んでいない人間にはなかなか伝わってこないところでしょうか。。。
言葉ではなく、映像でその能力や可能性を見せて欲しかったなあと思います。

まあ、この映画は四部作ということなので、そのあたりの謎は次回作以降でどんどん明かされていくということなのでしょうね。