【映画レビュー】8月の家族たち / August: Osage County
メリル・ストリープが女帝のように君臨する家庭の悲劇を喜劇的に描いた映画『8月の家族たち』。
アカデミー賞主演女優賞ノミネートにふさわしいメリルの憎々しい演技に、なんとも恐れを禁じ得ない作品です。
おなじくアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたジュリア・ロバーツも迫力の演技ですが、まあ、リア王のようなメリルの貫禄にはまだまだ及ばず、で…。
これは、どこの家庭にあってもおかしくない物語です。
でも、暴君に圧迫される家族の悲劇、そして暴君が暴君になった理由のやり切れない切なさに、“家族であること”の難しさを実感できる名ドラマです。
<STORY>
8月のある日、父親が失踪した。癌を患う母のバイオレットの暮らすオクラホマ州の家に、バーバラ、アイビー、カレンの三姉妹が戻ってくる。気が強い母は、薬の飲み過ぎでフラフラになりながらも毒舌をまき散らし、夫と離婚寸前の長女のバーバラと早速衝突する。バーバラは夫のビルとは別居中で、思春期の娘・ジーンにも反抗されてばかり。次女のアイビーには浮いた噂もなく、三女のカレンはうさんくさい婚約者を連れてきていた…。
<解説>
トレイシー・レッツの舞台劇を、『カンパニー・メン』のジョン・ウェルズ監督が映画化した本作。
父の家出・自殺をきっかけに、母の暮らす実家へ戻って来た三姉妹と、親戚たちが繰り広げる物語です。
母・バイオレットは癌に冒され、その治療のために飲んでいるはずの薬の中毒になっている女性。
歯に衣着せず、ラリった状態で家族たちを攻撃しまくります。
そんな彼女に耐えかね、父親は家を出ました。。。
そして、そんなバイオレットのもとに三姉妹が戻って来ます。
ジュリア・ロバーツ演じる真面目な長女・バーバラ。
若い女と浮気をした夫・ビルとは別居中、思春期の娘ともぎこちない関係。
ジュリアン・ニコルソン演じる堅物な次女・アイビー。
男の影などまったくなく、母親からはレズビアンじゃないかと言われたりするものの、密かに秘密の恋愛中。
ジュリエット・ルイス演じる軽めな三女・カレン。
決して男運がいいわけではないのに男が絶えず、どこかうさんくさい婚約者にべったりの恋愛依存タイプ。
この三姉妹、言い争いをしたり仲良くガールズトークをしたりしながら、暴君の母に立ち向かいます。
しかし、物語が進むうち、姉妹同士、そしてバイオレットの姉夫妻からもそれぞれ抱えて来た鬱憤や本音が噴出し始めるのです。
このドラマを見ていて印象的なのは、男性陣と女性陣が持つパワーの違いです。
女性陣のパワーはまっすぐで強情な力強さに満ちています。
それに比べて、男性陣パワーは柳のよう。
女性陣の間に吹き荒れる感情の嵐を時に受け流し、時に正面から受け止め、時に受け止めきれずボッキリ折れてしまうのです。
ユアン・マクレガー演じるバーバラの夫・ビルは、女性陣のパワーに右往左往するだけの役立たず。
クリス・クーパー演じるチャールズ(バイオレットの姉の夫)は、真実をじっと見つめつつも、家族を愛し、大きな愛で包み込んでいます。
そして、サム・シェパード演じるバイオレットの夫・ベバリーは、妻にパワーを吸い取られ、ひっそりとこの世から去って行くのです。
ベネディクト・カンバーバッチ演じる何をやってもダメな甥っ子、チャールズの息子のリトル・チャールズがどのような男性になっていくのか、これはとても興味深いところです。
でも、あんなステキな父親に愛されているのであれば、どんな真実にも耐えていけそうな気がしますが。。。
ある家庭で起こる8月の嵐を描いた映画『8月の家族たち』、メリル・ストリープの恐ろしいまでの迫力に酔いしれ、名優たちのコンビネーションを味わいながら、“家族”という関係の不思議さや、その厄介さについて考えてしまう一作なのでした。
『8月の家族たち』(121分/アメリカ/2013年)
原題:August: Osage County
公開:2014年4月18日
配給:アスミック・エース
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて
原作・脚本:トレイシー・レッツ
監督:ジョン・ウェルズ
出演:メリル・ストリープ/ジュリア・ロバーツ/ユアン・マクレガー/クリス・クーパー/アビゲイル・ブレスリン/ベネディクト・カンバーバッチ/ジュリエット・ルイス/マーゴ・マーティンデイル/ダーモット・マローニー/ジュリアンヌ・ニコルソン/サム・シェパード/ミスティ・アッパム
公式HP:http://august.asmik-ace.co.jp/
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