【映画レビュー】アメリカン・スナイパー / American Sniper
いくつになっても意気軒昂なクリント・イーストウッドが製作、監督を務めた映画『アメリカン・スナイパー』。
凄まじい狙撃の腕で米軍史上最多とされる160人の敵を射殺した実在の兵士、クリス・カイルの人生を見事に肉体改造したブラッドリー・クーパーが演じています。
クリス・カイルが象徴するのは、アメリカの兵士たちの光と影。
母国では“英雄”、敵国では“悪魔”と呼ばれる、“160人を殺した男”の荒涼とした心を、淡々と描いています。
STORY
1999年に海軍に入隊し、ネイビー・シールズの一員となったクリス・カイル。彼は訓練中に出会ったタヤという美女と結婚する。アメリカ同時多発テロ事件後の2003年、イラクに派遣され、狙撃手として海兵隊員たちを守る任務を担当することに。1.9キロ離れた地点から敵を正確に射抜く腕で、仲間たちから“伝説の狙撃手”と呼ばれるようになる。タヤとの間には二人の子どもが生まれるが、クリスは彼らを祖国に残し、4回にわたりイラクに赴く…。
解説
この作品は、主人公のクリス・カイルが一般人から兵士になり、そして英雄となっていく様を描いています。
クリス・カイルは、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を経て、祖国を守るために海軍に入隊します。
そして、イラクに派兵され、祖国のため、そして仲間の兵士を守るため、敵を狙撃していくのです。
彼には大義がある。
だからこそ、仲間の兵を害する少年をも、彼はためらわずに狙撃し、射殺するのです。
クリント・イーストウッド監督は、そんな英雄の姿を、ただヒロイックには描きません。
彼が少年をも射殺する様子、狙撃を重ねるに連れて彼が戦争に憑かれていく様子、戦争に心を蝕まれ、疲弊して中毒のようになっていく様子を、ただそのままに描いています。
彼は、アメリカ人から見れば英雄かもしれませんが、それ以外の国の民から見れば、大量殺人者でもあるのです。
イラクの反政府武装勢力からは、“ラマディの悪魔”とも呼ばれていたそうです。
監督は、そんな主人公の鏡像のような適役を、物語に登場させています。
イラク軍でクリスと同じように狙撃手として活躍する男は、まさに表と裏。
二人とも、その的確な射撃の腕で、仲間からは英雄、伝説と讃えられ、敵からは悪魔と憎まれています。
イラク兵にはイラク兵の、アメリカ兵にはアメリカ兵の大義がある。。。
このような描き方は、『父親たちの星条旗』、『硫黄島からの手紙』で硫黄島の戦いを日米両面から描いたクリント・イーストウッド監督らしいものだと思います。
敵味方問わず多くの犠牲者を出し、ヒーローを作り、悪魔を作り、人を蝕み、家族を壊し、国を守るという戦争をイーストウッドらしい目線で描いたこの作品『アメリカン・スナイパー』。
戦争が今や身近に感じられるようになって来たこの時代だからこそ、様々な国の人に観て欲しい映画だと思います。
別コラム
作品情報
『アメリカン・スナイパー』(132分/アメリカ/2014年)
原題:American Sniper
公開:2015年2月21日
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:全国にて
原作:クリス・カイル
監督・製作:クリント・イーストウッド
脚本:ジェイソン・ホール
出演:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/ジェイク・マクドーマン/ルーク・グライムス/ナビド・ネガーバン/ケビン・ラーチ/コリー・ハードリクト/キーア・オドネル/マックス・チャールズ/カイル・ガルナー/サム・ジェーガー/エリック・ラディーン/ベン・リード/エリース・コバートソン/コール・コニス/ルーク・サンシャイン
Official Website:http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/
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