【映画レビュー】アメリカン・ハッスル / American Hustle
いやー、なんだろう、この贅沢感!
クリスチャン・ベイル×エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパー×ジェニファー・ローレンスという『ザ・ファイター』、『世界にひとつのプレイブック』でもおなじみの秘蔵っ子俳優たちを迎え、デヴィッド・O・ラッセル監督が作り上げたコン・ムービー『アメリカン・ハッスル』。
エイミー・アダムスとジェニファー・ローレンスら女性陣のファッションやヘアアレンジもキュートだし、ハゲデブオヤジのクリスチャン・ベイル、パンチパーマのブラッドリー・クーパー、もっさりリーゼントのジェレミー・レナーら男性陣のキテレツなルックスもなんだかステキ。
実力派俳優たちの極上のアンサンブル、黄金がかったスクリーンに眼福を感じさせてくれた一作でした。
<STORY>
天才詐欺師のアーヴィン・ローゼンフェルドとその愛人シドニー・プロッサーは、FBI捜査官のリッチー・ディマーソに逮捕されてしまう。リッチーはアーヴィンとシドニーにある取引を持ちかけてきた。それは、偽物のアラブの大富豪からニュージャージー州カムデン市のカーマイン市長に賄賂を渡させ、市長を逮捕するという計画だった。アーヴィンは市長に近付き仲良くなり、ディナーに連れて行った妻のロザリンも、市長たちに気に入らるのだが…。
<解説>
1979年にFBIによって大物議員が次々に摘発された、“アブスキャム事件”。
FBIの秘密捜査官がアラブの大富豪に扮してオトリ捜査を行い、政治家を収賄で逮捕したこの事件を下敷きにして描かれた本作『アメリカン・ハッスル』。
このアブスキャム作戦を、FBIに協力した詐欺師たちが実行したものとし、FBI捜査官と詐欺師、その妻と愛人らの人間模様を描いています。
ハゲでデブながらも魅力的な詐欺師のアーヴィン・ローゼンフェルドを演じるのは、クリスチャン・ベイル。
映画冒頭から、ハゲ頭を黒いモフモフと9:1の横分けでうまく隠そうとするシーンで、アーヴィンの情けなさを全面的に表現しています。
そして、彼のビジネスパートナーかつ愛人で、優雅な巻き髪に胸の谷間もセクシーなシドニー・プロッサーをエイミー・アダムスが演じています。
この二人、運命的な愛で結ばれつつも、アーヴィンに本妻のロザリンがいることから、作戦中にも心がすれ違っていきます。
アーヴィンとシドニーをアブスキャム作戦に導くパンチパーマのFBI捜査官・リッチーを演じるのは、ブラッドリー・クーパー。
野心と功名心にあふれ、善悪の基準を無くしていくこのリッチーを、狂気じみた表情で演じています。
劇中であるセリフをきっかけに、リッチーの表情が一変するシーンがあるのですが、ここの演技が素晴らしい!
彼のサイコパスな一面と、にじみ出る性欲をごまかそうとする表情を、うまく顔で表現していました。
『世界にひとつのプレイブック』でもそうでしたが、ブラッドリー・クーパーは、こういう狂気と正気のスレスレにいるようなキャラクターを演じさせると抜群にうまいと思います。
そして、アーヴィンの本妻・ロザリンを演じるのは、ジェニファー・ローレンス。
ちょっとエキセントリックで憎々しくも口が立つ、ながらもどこか可愛い魅力を持ったブロンドの盛り髪も美しいホワイトトラッシュ、ロザリン。
このロザリン、ジェニファー・ローレンスが演じたことで、かなり魅力的なキャラクターになっています。
劇中で「Live and Let Die」を彼女が歌い躍るシーンがあるのですが、ここがもう、絶品。注目です。
また劇中のアーヴィンのセリフに「彼女(ロザリン)はやっぱり面白い」というセリフがあるのですが、これって“女優”ジェニファー・ローレンスに対するデヴィッド・O・ラッセル監督の本心じゃないのかなあ。
なんだか、「ジェニファー・ローレンスはやっぱり面白い」と思わせる可愛らしさが、彼女にはありますね。
そして、彼らに騙されることとなるカムデン市長のカーマインを演じるのは、ジェレミー・レナー。
大き過ぎるリーゼントヘアが特徴的な、家族と市民を愛する情熱あふれるパワフルな市長、カーマインをまっすぐに演じているのです。
このカーマイン、ほんとにまったく悪い人じゃないのに…。
人を信じすぎたが故に悪人になってしまいます。
この5人、みんながみんなヘアスタイルを作り込み、自分をより“違う存在”に見せようとしています。
そんな5人が入り乱れ、騙し騙されながら、作戦は進行していきます。
本当の自分をごまかし、自分を偽り、それぞれに違う方法で“本当の自分とは違う自分”になろうとしているこの5人の顛末は、どうなっていくのか…。
弱さやダサさを精一杯ごまかして、自分なりに成長を目指している大人たちの奮闘ぶりを、デヴィッド・O・ラッセル監督は、優雅なカメラワークで描き出します。
作品を彩る70年代ファッションと70年代の音楽に彩られ、名優たちの素晴らしいアンサンブルに心地よく騙されてしまう、素晴らしいコン・ムービーです。
『アメリカン・ハッスル』(138分/アメリカ/2013年)
原題:American Hustle
公開:2014年1月31日
配給:ファントム・フィルム
劇場:TOHOシネマズ みゆき座ほか全国にて
監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:クリスチャン・ベール/ブラッドリー・クーパー/エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/ジェニファー・ローレンス/ロバート・デ・ニーロ/ルイス・C・K/マイケル・ペーニャ/ジャック・ヒューストン/エリザベス・ローム/エリカ・マクダーモット/メリッサ・マクミーキン/コリーン・キャンプ/アレッサンドロ・ニヴォラ/ドーン・オリヴィエリ/トーマス・マシューズ/ボー・クリアリー
公式HP:http://american-hustle.jp/
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