【映画レビュー】セブン・シスターズ / What Happened to Monday?

セブン・シスターズ WHAT HAPPENED TO MONDAY?

ノオミ・ラパスが一卵性の7つ子を演じた映画『セブン・シスターズ』

荒唐無稽な話ながら、ノオミ・ラパスが作り出す7つ子たちのキャラクターの魅力や、グレン・クローズウィレム・デフォーの狂信者ぶりに、思わず引き込まれてしまう一作です。

 
<STORY>
近未来の欧州では、「児童分配法」という一家族につき一人の子どものみと定める法律が施行されていた。ある日、セットマン家に7つ子が誕生し、母親は出産時に死亡してしまう。7つ子の祖父は孫に月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜と名付け、名前に該当する曜日のみ外出することを許可した。7つ子は“カレン・セットマン”という名で人生を共有して生きてきたのだ。しかし、ある月曜日、月曜が外出したまま戻らなくなってしまう…。

 
<解説>
この作品で描かれているのは、地球の人口が爆発的に増加してしまったため、「児童分配法」という法律が施行された、ある意味、異常な世界です。
一家族には一人の子どもしか許されず、違法に生まれた子どもは、“人口問題が解決するまで”、クライオスリープという機械で冷凍睡眠させられてしまうという社会。
人権とか人間の自由や尊厳、そういったものがまったくなくなってしまった社会が舞台になっているのです。

ここで、7つ子として生まれ、7人で一人の女性の人生を生きるという数奇な運命を負うことになってしまったのが、ノオミ・ラパス演じるセットマン家の孫娘たち。
彼女たちの誕生と共に母親は亡くなり、ウィレム・デフォー演じる祖父に育てられます。

7つ子たちは、それぞれに個性的です。
聡明な野心家の月曜、繊細なヒッピーの火曜、恐れ知らずの戦士の水曜、ワイルドな反逆者の木曜、天才肌の理系ブレーンの金曜、パーティ好きのロマンチストの土曜、慈愛に満ちた仲裁役の日曜。
それぞれに魅力的な7つ子を、ノオミ・ラパスが見事に演じ分けています。

この映画の原題は“What Happened to Monday?”。
カレン・セットマンとして外出した月曜が何の連絡も戻らなかったことから、姉妹たちの探索と戦いが始まります。

月曜に何が起こったのか?
カレン・セットマンの秘密が誰かにバレたのか?
誰かが自分たちを告発したのか?
姉妹たちの誰かが何かを隠しているのか?

そんな疑問の渦巻く中、姉妹の一人ひとりが自分にできることをしながら、月曜が行方不明となった真相を探っていくのですが…。

 
この物語、全体的に一人七役をやっているノオミ・ラパスの演技が光るのはもちろんなのですが、映画のオープニングをひっぱる姉妹たちの祖父役のウィレム・デフォー、そして映画の終盤を締める政治家役のグレン・クローズの存在も忘れられません。

娘とのコミュニケーションがうまく取れなかったため、娘に家出され、死の間際にしか会えなかったことを悔い、その忘形見である7つ子を、社会に隠しながら七人一役で育てた祖父。
「児童分配法」を狂信的に推進し、“大義のため”子どもたちの人生を踏みにじろうとする政治家。

この二人は、ある意味、表裏一体のキャラクターとも言えます。
自分たちの勝手な信念で、七人の人間性を踏みにじり、自分たちが決めた生き方を彼らに押し付けようとするのです。

そういう意味では、この物語は老害の影響と戦い、若者たちが自分の人生を取り戻していく物語といえるでしょう。
物語は荒唐無稽でも、どこか共感できてしまうのは、こういったしっかりした物語の骨子のおかげなのかもしれません。

 
『セブン・シスターズ』(123分/フランス=イギリス=ベルギー/2016年)
原題:What Happened to Monday?
公開:2017年10月21日
配給:コピアポア・フィルム
劇場:新宿シネマカリテほか全国にて順次公開
監督:トミー・ウィルコラ
製作総指揮:ティエリー・デミシェル
製作:ラファエラ・デ・ラウレンティス/ファブリス・ジャンフェルミ/フィリップ・ルスレ
出演:ノオミ・ラパスグレン・クローズウィレム・デフォー/マーワン・ケンザリ/クリスチャン・ルーベック/ポール・スヴェーレ・ハーゲン
Official Website:http://www.7-sisters.com/

 

セブン・シスターズ WHAT HAPPENED TO MONDAY?
クリスチャン・ワイブ
Rambling RECORDS (2017-10-11)
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