【映画レビュー】雨とあなたの物語 / 비와 당신의 이야기

20年近い前、携帯電話はあったものの、まだSNSやスマホもなかった時代のコミュニケーションを描いた韓国映画『雨とあなたの物語』

小学時代の同級生と手紙のやりとりをする浪人生と、姉のふりをしてその浪人生と文通を続ける妹の姿を描いています。

自分の人生の行き先が決まらないあやふやな浪人生。
そんな時期に、手紙を待つ間に、自分の想いを醸成させていく二人の姿を、カン・ハヌルチョン・ウヒがみずみずしく演じています。

STORY

2003年、韓国・ソウル。二浪中の予備校生・ヨンホは小学校の頃に出会った同級生・ソヨンに手紙を出す。ソヨンとはほとんど話したことがないまま、プサンに転校してしまっていた。プサンに住むソヨンは難病で入院中。文字カードを使って簡単な文章を伝えることでしか意思疎通もできない状態だった。ソヨンの世話をする妹・ソヒは、ソヨンのふりをしてヨンホに手紙を返信。文通が始まり、ヨンホとソヒの毎日が少しずつ輝き始めた……。

解説

この映画の主人公・ヨンホは二浪中の受験生。将来の夢もなく、ただ漠然と浪人している若者です。
ヨンホという名前は、1940年頃から多く名付けられたありふれた男性の名前で、今は少し古く感じる名前なのだそう。日本で言うと、ヨシオとかそんな感じでしょうか。
ヨンホは皮革職人の父親の工房で、手紙を書いたり、革小物を作ってソヨンに送ったりしています。
来年は大学に行けるのか、本当に大学に行きたいのか、自分のやりたいことはなんなのか……。モラトリアムの真っ最中にいると言ってもいいでしょう。

対するソヒは、家業である古書店を手伝いながら、病気の姉を看病するという生活をしています。
時が止まったような古書店、ほとんどコミュニケーションも取れない寝たきりの姉の看護……。
言ってみれば、自分で人生を選びとったわけではなく、家族の関係で今の毎日が決まってしまった女性。姉の容体や古書店経営者である母の意向で、自分の少し先の未来も変わってしまうかもしれないという、こちらもモラトリアムな状態にいるのです。

そんな二人にとって、文通だけが、モラトリアムの状態から解き放たれ、自由に夢や気持ちを語れる場でした。
だからこそ、文通を続けるうちに会いたさは募っていきます。
しかし、姉のソヨンの名前をかたっているソヒにとっては、ヨンホと会うことは自分の居場所の一つをなくすかもしれない恐怖でもあるのでした。。。

そんな二人は「12月31日に雨が降っていたら会いましょう」と約束します。
気象条件的に、降る可能性の低い雨を待ち続ける二人。
モラトリアムから抜け出すきっかけをくれた運命の相手との再会は、簡単なことではないのです。
でも、簡単ではないからこそ、最後に差し込む光に希望を感じることができるのでした。。。

作品情報

『雨とあなたの物語』(117分/韓国/2021年)
原題:비와 당신의 이야기
英題:Waiting For Rain
公開:2021年12月17日
配給:シンカ
劇場:シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて
監督:チョ・ジンモ
脚本:ユ・ソンヨプ
音楽:キム・ジュンソク
出演:カン・ハヌルチョン・ウヒカン・ソラ/イ・ソル/イ・ヤンヒ/イ・ハンナ/カン・ヨンソク/イム・ジュファン/キム・ソンギュン
Official Website:https://synca.jp/ametoanata/

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