【映画レビュー】ファッションが教えてくれること / The September Issue
映画『プラダを着た悪魔』の鬼編集長ミランダのモデルとなったと言われるアナ・ウィンターの仕事ぶりを追ったドキュメンタリー『ファッションが教えてくれること』。
これ、かなり面白いです!
プライドを持って仕事に取り組む“プロフェッショナル”たちの姿をとくとご堪能あれ!
<STORY>
アメリカ版「ヴォーグ」の秋のファッション特大号・9月号。そのシーズンの流行を左右する9月号は、ヴォーグが一番力を入れている号の一つだ。編集部員たちはそれぞれに特集テーマを企画するが、編集長のアナ・ウィンターはことごとく却下。なんとかアナの了解を得て、撮影が終了した企画でも、出来あがった写真を見てアナはまたそれを却下していく。クリエイティブ・ディレクターのグレイスは、締切5日前まで撮影に奔走する…。
<解説>
アナ・ウィンターと言えば、それこそファッション業界では伝説的な存在。
『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたミランダ・プリーストリー、『あなたは私の婿になる』でサンドラ・ブロックが演じたマーガレット・テイトらの“悪魔のような女編集長”ぶりは、全て彼女のこんなイメージが原型にあるのかもしれません。
・ハイヒールのかかとを鳴らして颯爽とオフィスに参上。
・彼女が来ると編集部の空気が一変。部員たちは身だしなみを整えて、フラットシューズからハイヒールに履き替えなければならない。
・コーヒーの好みにうるさく、毎日自分好みのコーヒーが出勤後すぐに用意されないと許さない。
・くだらない企画は一瞥しただけでボツ。
・アシスタントには次から次に無理難題を言いつける。
・口答えは許さない。
…いやー、こんな上司、イヤですよね。。。
でも、この映画『ファッションが教えてくれること』は、そんな作られたステレオタイプなイメージとは違う、真剣に仕事に取り組むアナの姿を見せてくれます。
この映画を観ると「こんな上司の下で仕事がしたい!!」って、思います。
(いや…やっぱりちょっとイヤだけど。。。)
それは何故かというと、彼女の仕事に対する真摯な姿勢が、はっきりと映し出されているから。
例えば、「完全に納得しているわけではないけど、納期や予算もあるし、このくらいの出来で手を打つか…」と、ちょっと妥協して終わらせてしまう仕事って、よくあると思うんです。
「自分で手を動かして作った物なら自分で直すんだけど、部下が一生懸命作ったものだし、また直させるのも手間がかかるな…」とか。
でも、アナはそれを許しません。
1万ドルかけて撮影した写真であろうと、締切1週間まであろうと、クリエイティブに納得がいかなければ、一言でボツ。
一生懸命頑張って撮影してきたスタッフの気持ちには斟酌しません。
だって時代の先鋭たる「ヴォーグ」の基準に達していないんですから。
こういう、なかなか出来ないことを平気でやってのけるアナだからこそ、アメリカ版ヴォーグが大成功をおさめ、アメリカ女性の約10人に1人、1300万人が読む雑誌に成長したのだろうと思います。
徹底的に時代をみつめ、その断片を切り取ろうとするクリエイターとしてのアナ、慣れ合いではなく、良いものを作るために、部下たちに極限までの努力を強いるアナの姿に、クリエイターの孤独と恍惚をみました。
クリエイターたるもの、本来はこういう強い信念と矜持を持って仕事をしなければならないのだなと、ついつい自らの過去の仕事ぶりを振り返らせてくれる作品でした。
いやー、ダメだったわ、私。。。
後、個人的に大好きなカール・ラガーフェルド御大のポニーテイル姿を拝むことが出来たのも、ちょっと嬉しかったです。ジョン・ガリアーノの姿もあれば、なお良かったのにな。。。
<関連作レビュー>
仕事に“妥協”していない? 厳しい上司の判断に挫けそうになった時、聞きたい名言【仕事に効く映画の名言#1】:https://mainichi.doda.jp/article/2020/08/06/1952
『ファッションが教えてくれること』(90分/アメリカ/2009年)
原題:The September Issue
公開:2009年11月7日
配給:クロックワークス
劇場:新宿バルト9ほかにて
監督:R.J.カトラー
出演:アナ・ウィンター/シエナ・ミラー/カール・ラガーフェルド/タクーン・パニクガル/グレイス・コディントン
公式HP:http://www.fashion-movie.jp/
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