終着駅-トルストイ最後の旅- / The Last Station

終着駅 トルストイ最後の旅 [DVD]

悪妻との生活に疲れ、82歳にして家出を決行、そしてその家出の途中で亡くなった、ロシアの文豪、レフ・トルストイ

この映画『終着駅-トルストイ最後の旅-』では、“世界三大悪妻”と言われたトルストイの妻・ソフィヤとトルストイの晩年の生活を、弟子の目を通して描いていきます。

なぜ、ソフィヤが悪妻と言われたのか?
それは、トルストイのことを後世に伝えようとした弟子たちが、ソフィヤのことを良く思っていなかったから。
ソフィヤは人類愛を訴える壮大な“トルストイ主義”よりも、卑小で個人的な“家族愛”の方を求めたのです。

ソフィヤは、後世に自分の声を伝える術を持っていなかったけれど、弟子は“剣”よりも強い“ペン”を持っていました。
彼らが書き残したソフィヤ像を見ると、確かに悪妻に思えます。
でも、ソフィヤの立場から考えれば、彼女は自分の愛する家族と、家族の生活を守ろうとしただけなのです。

「そんな理想ばっかり言ってないで、私と子どもたちをしっかり幸せにして!」
という女性の叫びは、理想主義者の男性には通じないのかもしれません。。。

<STORY>
トルストイ主義を信望する青年・ワレンチコは、トルストイの一番弟子チェルトコフに見込まれ、トルストイの秘書となる。トルストイ作品の著作権を放棄させようとするチェルトコフとトルストイの妻・ソフィヤ夫人は対立しており、ワレンチコを使ってソフィヤ夫人の動向を見はろうとしたのだ。ワレンチコはトルストイ夫妻に会い、ふたりが積み重ねて来た深い愛に気付く。しかし、人類愛と妻への愛の間で、トルストイは苦しんでいた…。

<Cheeseの解説>

The Last Station (Movie Tie-in Edition): A Novel of Tolstoy's Final Year (Random House Movie Tie-In Books)

伯爵家の四男として、上流階級の教育を受け、裕福に育ってきたトルストイ。
34歳で16歳年下の女性・ソフィヤと恋に落ちて結婚し、13人もの子どもを設けます。

34歳で結婚したのち、82歳で亡くなるまで、48年間、ふたりは添い遂げるわけですが、トルストイの信義上の変心が、ふたりの関係に大きくひびを入れました。
ふたりの関係を大きく変えた“トルストイ主義”に関して、該当する箇所をWikipediaから抜粋します。

世界的名声を得たトルストイだったが、『アンナ・カレーニナ』を書き終える頃から人生の無意味さに苦しみ、自殺を考えるようにさえなる。精神的な彷徨の末、宗教や民衆の素朴な生き方にひかれ、山上の垂訓を中心として自己完成を目指す原始キリスト教的な独自の教義を作り上げ、以後作家の立場を捨て、その教義を広める思想家・説教者として活動するようになった。その活動においてトルストイは、民衆を圧迫する政府を論文などで非難し、国家を否定したが、たとえ反政府運動であっても暴力は認めなかった。当時大きな権威をもっていたロシア正教会も国家権力と癒着してキリストの教えから離れているとして批判の対象となった。また信条にもとづいて自身の生活を簡素にし、農作業にも従事するようになる。そのうえ印税や地代を拒否しようとして、家族と対立し、1884年には最初の家出を試みた。

この部分だけ見ると、トルストイは禁欲的で、頑迷な人間のように思えます。
しかし、映画内では、彼はとても大らかで、人間みにあふれた人物として描かれていました。

彼は、家族への愛にあふれ、男女のセックスなどについても大らかに認めています。
ただ、家族のことを大事に思うのと同じくらいロシア人民のことも大切に考え、自分の持つ著作権料を人民たちに還元しようとするのです。

しかし、夫を愛するソフィヤ夫人にとっては、自分の子どもたちの権利がはく奪されているように感じられて、著作権料を放棄しようとする夫が許せない。
自分の家族よりも、ロシア人民の方を大切に思っている夫に、嫉妬めいた感情を抱いてもいます。
そして、夫をそそのかし、活動に利用している(ように見える)トルストイの一番弟子・チェルトコフと反目しあうのです。
そして、そのふたりの対決に心を痛めたトルストイは家出をし、旅先の駅で亡くなってしまうのでした…。

愛するが故に夫に苛立つ妻、妻を愛しているけれども、家族のことだけを考えるわけにもいかない夫のすれ違う姿が、なんとも切なく映ります。
また、トルストイを演じるクリストファー・プラマーと、ソフィヤを演じるヘレン・ミレンの演技が素晴らしく、窓辺に佇む姿ひとつからも、彼らの複雑な愛憎が感じ取れるのでした。

夫婦の愛って言うのは、なんとも深遠なものだなあと実感させてくれる本作、じっくり味わいたい名作です。

そうそう、この作品に関しては、個人的なツボがもうひとつ。
この作品で、ソフィヤは裕福な伯爵夫人なわけですが、彼女のファッションやジュエリーの数々が、なんとも素晴らしいのです。
特に、彼女が着けているゴシック調のピアスの数々が、なんとも素敵。
ゴシックジュエリー好きなもので、ついつい食い入るように見つめてしまいました。。。

『終着駅-トルストイ最後の旅-』(112分/ドイツ=ロシア/2009年)
原題:The Last Station
公開:2010年9月11日
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場:TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開
原作:ジェイ・パリーニ
監督:マイケル・ホフマン
出演:ヘレン・ミレンクリストファー・プラマージェームズ・マカヴォイポール・ジアマッティアンヌ=マリー・ダフ/ケリー・コンドン
公式HP:http://www.saigo-tabi.jp/

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