【映画レビュー】ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 / LUFTSLOTTET SOM SPRANGDES
「リスベット 活躍編」、「リスベット 死闘編」に続く「ミレニアム」シリーズ第三弾『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』。
本作はさしずめ「リスベット お姫様編」といった趣です。
実の父親から、スウェーデン公安警察から、少女時代の主治医から、後見人から、虐げられ続けて来たリスベット。
前作の最後に瀕死の重傷を負った彼女を、ミカエルを始めとする狂卓の騎士たちが、一団となって彼女を守り、彼女の尊厳を取り戻そうとするのです。
でも、リスベットはただの眠れるお姫様ではありません。
パンキッシュなファッションと逆立てた髪、奇抜なメイクで、自分というものをしっかりと主張し、最後のおとしまえは自分できっちり着けようとするのです。
そう言った意味では、やはりリスベットは、今までにない、新しいヒロイン像だと思います。
<STORY>
ザラとの死闘の末、瀕死の重傷を負ったリスベットは入院。ミカエルは彼女にPDAを与え、自伝を書くように勧める。そして、弁護士をしている妹・アニカにリスベットの弁護を頼んだ。しかし、ザラに特権を与えていた公安警察内の秘密組織“班”は、リスベットの口をふさぐため、再び彼女を陥れようとする。ミカエルはリスベットの友人のハッカー・プレイグらと協力しながら、リスベットを理不尽な陰謀から守るために立ち上がる…。
<解説>
スウェーデン公安警察によるある陰謀に巻き込まれ、責任能力のない無能力者として聖ステファン児童精神病院に収容されていたリスベット。
主治医であるペーテル・テレボリアンにも虐待を受け、成人してからも後見人を付けられ、その後見人からも性的虐待を受けるようになります。
そうやって、自分の意志や能力とは無関係に、国家の威を借りた“女を憎む男たち”から虐げられてきたリスベット。
陰謀の全貌が明らかになる本作では、騎士たちに守られたリスベットが、復権をかけ、静かな戦いを繰り広げるのです。
それにしても、この「ミレニアム」シリーズのおかげで、スウェーデンという国のイメージが随分と変わりました。
私にとってはスウェーデンとは『ロッタちゃん はじめてのおつかい』のような牧歌的なイメージであったり、「フリーセックス」というような先進的なイメージだったり、高福祉国家というイメージだったり。
どちらにしろ、(金融は破綻しているにしても)安心して暮らしていける、国民にやさしい国、というイメージでした。
でも実は、男性から女性への性的虐待や人身売買などの問題も抱えた国であるということを、本シリーズで初めて知りました。
本作の作品中には、街並を映した時に、ベビーカーを押した母親の姿が何度も映っていたり、リスベットを助ける外科医の通勤用自転車に大きなチャイルドシートが付いていたり、“子育て”の雰囲気が日本やアメリカの映画に比べて、多く漂っていたように思います。
子どもを大事にする文化も、そこにはもちろん存在するのでしょう。
でも、その陰には児童虐待の問題なども存在するのだな…と、物事をイメージだけで捉える危険性を教えてくれました。
刺激的なビジュアルと奥深い問題をはらんだこの作品、既にハリウッド・リメイクが決定しています。
ミカエル役はダニエル・クレイグに早くから決まっていたのですが、いよいよヒロイン・リスベットを演じる女優も決まったようです。
それは、子役出身の若手女優、ルーニー・マーラ。
日本ではほとんど無名の彼女ですが、秋には出演映画『ソーシャル・ネットワーク』も公開される、これからが期待される女優さんのひとり。
彼女がどんなリスベット像を見せてくれるのか、期待したいと思います。
ハリウッド版『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』主演女優にルーニー・マーラが大抜擢!
http://news.walkerplus.com/2010/0817/18/
【関連作レビュー】
■映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(スウェーデン版):http://c-movie.jp/review/millennium/
■映画『ミレニアム2 火と戯れる女』(スウェーデン版):http://c-movie.jp/review/the-girl-who-played-with-fire/
■映画『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(スウェーデン版):http://c-movie.jp/review/the-girl-who-kicked-the-hornets-nest/
■映画『ドラゴン・タトゥーの女』(ハリウッド版):http://c-movie.jp/review/the-girl-with-the-dragon-tattoo/
◆【本】ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 / スティーグ・ラーソン:http://c-movie.jp/book/man-som-hatar-kvinnor/
◆【本】ミレニアム2 火と戯れる女 / スティーグ・ラーソン:http://c-movie.jp/book/flickan-som-lekte-med-elden/
◆【本】ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 / スティーグ・ラーソン:http://c-movie.jp/book/luftslottet-som-sprangdes/
『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』
(148分/スウェーデン=デンマーク=ドイツ/2009年)
原題:LUFTSLOTTET SOM SPRANGDES
英題:THE GIRL WHO KICKED THE HORNET’S NEST
公開:2010年9月11日
配給:ギャガ
劇場:シネマライズほか全国にて順次公開
原作:スティーグ・ラーソン
監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:ノオミ・ラパス/ミカエル・ニクヴィスト/レナ・エンドレ/ペーテル・アンデション/パール・オスカーソン
公式HP:http://millennium.gaga.ne.jp/
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