【映画レビュー】スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち / Stuntwomen: The Untold Hollywood Story
「ワンダーウーマン」シリーズのワンダーウーマン、「アベンジャーズ」シリーズのブラック・ウィドウやキャプテン・マーベルなど、タイトルロールとなる女性ヒーローが格段に増えた昨今。
映画ファンがその姿をよく見ているのに、まったく見ていない存在がいます。それが、女性のスタントパフォーマーであるスタントウーマン。
「ワイルド・スピード」シリーズなどで知られる女優ミシェル・ロドリゲスが製作総指揮を務めるドキュメンタリー映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』は、そんなスタントウーマンに焦点を当てた一作。
彼女たちがいかに映画業界を支えてきたか、彼女たちが今いかに必要かを実感させてくれる、見応えたっぷりのドキュメンタリーです。
<STORY>
アクション映画に欠かせない存在、スタントパフォーマー。映画業界、特にアクション映画の世界は、昔から男性社会だが、現在は女性のスタントパフォーマー、スタントウーマンの活躍が目覚ましい。プロデューサーのミシェル・ロドリゲスは、現役のスタントウーマンらとスタントについて語り合い、1960年代から活躍してきたスタントウーマンの草分け的存在、ジニー・エッパーやジュール・アン・ジョンソンにインタビューを行う。
<解説>
錚々たる作品に出演する新旧のスタントウーマンたちの素顔を見ることができる本作。
古くは1960年代から業界に入り、『ダーティハリー』や「空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン」(1975〜1979)でスタントを務めたジュール・アン・ジョンソン。
同じく「ワンダーウーマン」でリンダ・カーターの、そして「地上最強の美女たち! チャーリーズ・エンジェル」(1976〜1981)でのケイト・ジャクソンのスタントを務めたジニー・エッパー。
ハリウッドで初めて黒人女性のスタントウーマンとしてのキャリアを確立し、『フォクシー・ブラウン』(1974)や『大地震』(1974)に出演したジェイディ・デイビッド。
こんなレジェンド的なスタントウーマンたちがインタビューに答えています。
そして、現在も大御所として活躍するスタントウーマンも。
『トゥルーライズ』(1994)でハイウェイを走る車からヘリコプターから吊るされた縄ばしごに移るスタントを披露したドナ・キーガン。
スタントウーマンだけでなくスタントコーディネーターとしても活躍しているメリッサ・スタッブス。
「ワイルド・スピード」シリーズでミシェル・ロドリゲスに代わり素晴らしいドライビングテクニックを披露し、『マトリックス リローデッド』(2003)ではキャリー=アン・モスに代わりバイクに乗ってハイウェイを逆走するという離れ業を見せたデビー・エヴァンス。
さらには、昨今のアメコミ大作などに出演している華々しい若手スタントウーマンまで登場。
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)でスカーレット・ヨハンソンのボディダブルを務めるエイミー・ジョンソン。
同じく『ブラック・ウィドウ』などのMCU作品でスカーレット・ヨハンソンのボディダブルを務めるハイディ・マニーメイカー。
『キャプテン・マーベル』(2019)でブリー・ラーソンのボディダブルを務めるレネー・マニーメイカー。
他にも、多くのスタントウーマンが登場していますが、彼女たちの出演作を挙げていくと、本当にキリがありません。
一口にスタントといっても、その種類は本当にさまざま。
一対一の格闘から乱闘、ガンアクション、カーアクション、バイクアクション、ワイヤーで吊るされたり飛ばされたり、高所から飛び降りたり、火の中に飛び込んだり、火だるまになったり、水の中に飛び込んだり、階段から落ちたり、車にはねられたり、車を横転させたり、車をクラッシュさせたり、馬に乗ったり馬から落ちたり、群衆の中で何かに襲われたり。
しかも、女優の代わりを演じるという特質上、女優のように見える体型を求められたりもします。
ハイヒールを履きタイトなドレスを着て走ったり格闘しなければならなかったり、露出の高い服装でふっとばなければならなかったり。
長ズボンを履き、膝にパッドを入れてスタントを行う男性スタントマンとは違う苦労が、女性であるがゆえにあったりするのです。
そんな大変さの中で、求められるアクションをこなすため、彼女たちは日々、トレーニングに励んでいるのです。
彼女たちは、ハリウッドという男性社会の中ではまだまだマイノリティ。
男性がカツラをつけて女性のスタントを勤める“Wigging(ウィギング)”は、彼女たちにとっては大きな屈辱なのだとか。だからこそ、「やっぱり男のスタントマンを使おう」などと言われないよう、ベストパフォーマンスを出せなければいけません。
“最高のスタント・ドライバー”として高い評価を受けるデビー・エヴァンスですら、「女が一度ミスをするとその評判がついてまわり、男たちに見下される」と、男社会の中で実力を証明していく重要性を語っていました。
今でもそうなのだから、黎明期はもっとひどい差別があったことでしょう。
ジュール・アン・ジョンソン、ジニー・エッパーらはスタントマン協会に入れてもらえず、自分たちでスタントウーマン協会を設立したそう。
そしてその頃は、スタントウーマンだけでなく、黒人スタントパフォーマーへの差別もありました。
だからこそ、黒人スタント協会ははじめから男性も女性も参加することができたそうです。
ジェイディ・デイビッドは黒人スタント協会とスタントマン協会の両方に参加していたようでした。
このドキュメンタリー映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』は、そんな映画業界で逆境をはね返し、自分の実力を示し続けてきた女性たちの記録でもあります。
素晴らしい先達がいたからこそ、現在のようなアクション映画全盛時代に、女性ヒーローが活躍できるのです。
この映画を観たあとでアクション映画を観ると、ちょっと違って見えてくるはず。
スクリーンの陰に隠れた女性ヒーローたちのパワフルさに、エンパワーメントされるようなドキュメンタリーでした。
『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』(84分/アメリカ/2020年)
原題:Stuntwomen: The Untold Hollywood Story
公開:2021年1月8日
配給:イオンエンターテイメント
製作国:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて
監督:エイプリル・ライト
製作総指揮・出演・ナレーション:ミシェル・ロドリゲス
製作総指揮:リンウッド・スピンクス
出演:エイミー・ジョンソン/アリマ・ドーシー/シャーリーン・ロイヤー/ジニー・エッパー/ジュール・アン・ジョンソン/ジェイディ・デイビッド/デヴン・マクネア/ハイディ・マニーメイカー/レネー・マニーメイカー/ドナ・キーガン/ミシェル・ジュビリー・ゴンザレス/シェリル・ルイス/ジェニファー・カプート/ケリー・ロイシーン/ハンナ・ベッツ/リー・ジン/タミー・ベアード/ケイトリン・ブルック/ジェシー・グラフ/メリッサ・スタッブス/デビー・エヴァンス/ドナ・エヴァンス/ラファイエ・ベイカー/アンジェラ・メリル/ケイシャ・タッカー/マリッサ・ラボッグ/ヴァイア・ザガナス/キリアナ・スタントン/ジェニファー・マイレーア/ゼンダラ・ケネディ/アン・フレッチャー/ポール・バーホーベン/アルバート・ラディ
Official Website:http://stuntwomen-movie.com/
The University Press of Kentucky (2015-11-19T00:00:00.000Z)
¥2,174
ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-04-21T00:00:01Z)
¥973
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2017-08-23T00:00:01Z)
¥12,800
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2017-11-22T00:00:01Z)
¥16,500
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2009-08-26T00:00:01Z)
¥3,280
Olive Films (2015T)
¥2,845
ジェネオン・ユニバーサル (2013-11-27T00:00:01Z)
¥980
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2018-03-16T00:00:01Z)
¥1,249
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2020-07-08T00:00:01Z)
¥8,980
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2019-07-03T00:00:01Z)
¥3,338
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2016-12-21T00:00:01Z)
¥4,000
ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-04-21T00:00:01Z)
¥1,380