【映画レビュー】草原の椅子

宮本輝原作小説を、『八日目の蝉』成島出監督が映画化した『草原の椅子』

率直な感想は、「なんだか変な映画…」。

佐藤浩市をはじめとする登場人物、すべてがみんなちょっとずつ変。
大阪弁の西村雅彦や、震災の報道を見て影響されてしまった小池栄子なんかは、わかりやすい変さなのですが、“普通の人”として描写されている他の登場人物もなんだか変なのです。

1999年に阪神大震災を経験した宮本輝が、家が全壊した後、40日間にわたりシルクロード6700キロの旅をしたことをきっかけに“人間力のあるおとな”を描こうと、この原作を書いたそうです。
2012年に東日本大震災を経験した日本人を描いているこの作品、どうも登場人物が“人間力のあるおとな”には見えないのですよね。。。
まあ、フンザへの旅をきっかけに、この映画の物語の後、主人公の遠間(佐藤浩市)や富樫(西村雅彦)、貴志子(吉瀬美智子)たちが少しずつ“人間力のあるおとな”に変わっていく、ということなのでしょうか…。

<STORY>
カメラメーカーに務めるバツイチで50歳の遠間憲太郎は、取引先の社長・富樫重蔵が女性とトラブルになっていたところを助け、親友になって欲しいと頼まれた。遠間も最初は戸惑うが、同い年ということもあり、だんだんと打ち解けていく。ある日、遠間の大学生の娘・弥生がバイト先の上司・喜多川の4歳になる子ども・圭輔を預かりたいと言い出した。圭輔は喜多川の妻の連れ子で、彼女から受けた虐待や育児放棄のせいで心を閉ざしていた…。

<解説>
人生も折り返し地点を過ぎた50歳の中年男性が、新たな親友を得て、4歳の子どもと出会い、新しい恋をする活力を得る、この物語。

日本でただ漫然と暮らしている間には、いろいろと葛藤はするものの足を踏み出す勇気を出せなかった大人たちですが、“世界最後の桃源郷”と言われるパキスタンのフンザに旅に出て、圧倒的な砂漠や自然に身を委ねるうちに、新たな人生に踏み出す勇気を得るのです。

まあ、なんというか、ある意味大人のオトコのファンタジーを形にした映画ということができるでしょう。

この映画には小池栄子が演じる母親(彼女の演技が素晴らしく恐ろしい!)に虐待された4歳の男の子・圭輔くんが出てきます。
圭輔を演じた貞光奏風くんはほとんど演技経験もなかったらしいのですが、虐待を受けて心を閉ざしてしまった少年を懸命に演じています。
(ぎこちない演技も愛らしく、“可愛いは正義”という言葉を思い出させてくれました…)
作中ではあまり笑顔も見せず言葉も少ない彼、端正な顔立ちだけに、彼の母親であってもおかしくない年齢の私としては、本当に心閉ざしているのではないかと思わず心配してしまったりも。
でも、映画のエンドロールやプレスシートを見ると、満面の笑みで佐藤浩市や吉瀬美智子に可愛がられている姿が映っていて、「あー、こんな無邪気な笑顔ができるのね」と、なんだかホッとしてしまいました。

まだ4歳と幼い彼ですが、あと2~3年もすれば、日本映画界に大きな存在感を示す子役さんになってくれるのではないでしょうか。
貞光奏風くん、これからの成長が楽しみな子役の一人です。

『草原の椅子』(139分/日本/2013年)
公開:2013年2月23日
配給:東映
劇場:全国にて
原作:宮本輝
監督:成島出
出演:佐藤浩市西村雅彦吉瀬美智子小池栄子/貞光奏風/AKIRA黒木華中村靖日若村麻由美井川比佐志
公式HP:http://www.sougennoisu.jp/

草原の椅子〈上〉 (幻冬舎文庫)
宮本 輝
幻冬舎
売り上げランキング: 2,125
草原の椅子〈下〉 (幻冬舎文庫)
宮本 輝
幻冬舎
売り上げランキング: 1,287
50歳から始めるお金の話 映画『草原の椅子』より (小学館文庫)
野尻 哲史
小学館 (2013-02-06)
売り上げランキング: 143,189
スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です