【映画レビュー】気狂いピエロ / Pierrot le fou
ジャン=リュック・ゴダールが1965年に手がけた映画『気狂いピエロ』。
ゴダールが自身の妻でありミューズであったアンナ・カリーナを主演に迎えて作った、『勝手にしやがれ』と並び立つヌーヴェルヴァーグの代表作とも言える一作です。
その後の映画界にも大きな影響を与えたこの作品、製作から50年以上を経た今観ると、やはり差別的であったりと、時代に即さない面も見られます。
しかし、その圧倒的な色彩や時には過剰なほど饒舌な詩情などは、今でも十分に見応えを感じさせてくれる、映画ファン必見の一作です。
<STORY>
裕福な妻と結婚したフェルディナンは、かつての恋人のマリアンヌと再会する。彼女の部屋で一夜を過ごしたフェルディナンは、ある男の死体を発見。マリアンヌと共に逃避行に出る。二人は着のみ着のままでマリアンヌの兄のいる南仏へと車で向かう。道中、二人は気まぐれに犯罪を積み重ねていく。そのうちに海岸の小屋に住み着いて自給自足生活を始めるが、マリアンヌはだんだんとそんな生活やフェルディナンに嫌気がさしてきて…。
<解説>
アンナ・カリーナ演じるマリアンヌと、ジャン=ポール・ベルモンド演じる“ピエロ”ことフェルディナンの、あてのない逃避行を描いた本作。
裕福な女性と結婚して目標のない日々を送っていたフェルディナンは、かつて関係のあったマリアンヌと再会し、久しぶりに心が弾むのを感じます。謎めいたマリアンヌの家には、なぜかハサミで刺し殺された男性の死体が。マリアンヌは武器の密輸と関わっているようなのです。
ギャングが追ってきたのを知ったマリアンヌは、兄のいる南仏へ逃げることをフェルディナンに提案します。フェルディナンは生きている実感を久々に感じながら、マリアンヌと共に南仏へ向かうことに。
人工的な色彩の都会から逃げ出した二人は、青い車や赤い車を駆って自然のなかに逃げていきます。そして、殺人や騙り、盗みなどを軽やかに繰り返しながら、南仏を目指すのです。
やがて二人は、海辺の小屋で鳥とともに密かに暮らし始めます。本を読み、自給自足する生活に満足を感じるフェルディナンに対し、マリアンヌはだんだんと不満を募らせるように。やがて彼女はギャングと共に消え、彼女のいたホテルの部屋には男の死体が一つ残されて…。
気まぐれで何を考えているのかわからないマリアンヌと、文学や芸術、文化を愛すフェルディナン。最初は噛み合っていた彼らの逃避行は、だんだんとすれ違い、やがて破滅に突き進んでいきます。
青い海に囲まれた島で、太陽を浴びたフェルディナン。彼は自分を裏切ったマリアンヌを手にかけます。そして赤いシャツを着て顔を青く塗った彼は赤と黄のダイナマイトに火をつけます。海と太陽の間で、彼らは永遠になったのです。
多くの漫画や詩、小説などがコラージュのように登場するこの作品の中で、フェルディナンドが最後に口にするのが、アルチュール・ランボーの「地獄の季節」の中の一節。
L’Éternité
Elle est retrouvée.
Quoi ? — L’Éternité.
C’est la mer allée
Avec le soleil
鮮やかな色彩に溢れた、『気狂いピエロ』、ヌーヴェルバーグを語る際に外せない一作として、映画史の中で永遠に輝く作品です。
『気狂いピエロ』(105分/フランス・イタリア合作/1965年)
原題:Pierrot le fou
日本初公開:1967年7月
配給:オンリー・ハーツ
原作:ライオネル・ホワイト
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
製作:ジョルジュ・ド・ボールガール/ディノ・デ・ラウレンティス
音楽:アントワーヌ・デュアメル
出演:ジャン=ポール・ベルモンド/アンナ・カリーナ/グラッツィラ・ガルヴァーニ/ロジェ・デュトワ/ハンス・メイヤー/サミュエル・フラー/ジャン=ピエール・レオ/ラズロ・サボ/レイモン・ドボス/ジミー・カルービ/ダーク・サンダース
Official Website:http://pierrot.onlyhearts.co.jp/
KADOKAWA / 角川書店 (2017-10-27T00:00:01Z)
¥1,100
岩波書店 (1970-09-01T00:00:01Z)
¥572