パラレルライフ／平行理論

2010/7/13 外国映画は行, 映画レビュー

「平行理論」ってご存知ですか？
ざっくり言うと、時空を超えて、まったく違うふたりの人生がパラレルに進んで行くことがある、という現象のようで…。

代表的な存在は、エイブラハム・リンカーンとジョン・Ｆ・ケネディという、ふたりのアメリカ大統領。
生まれた年から亡くなった年、大統領に当選した年齢、死因などが、百年の年月を隔ててほぼ一致しているのだとか。

映画『パラレルライフ』は自分の人生がある人物との“パラレルライフ”であると気付いた男の物語です。

謎が謎を呼ぶ、というか、主人公の周囲の複雑な人間関係と、過去に起こった事件が複雑に絡み合い、事件の糸はグチャグチャにもつれていきます。
でも、その糸は、最後にはすうっとすべてがほどけていくのですが…。

＜STORY＞
キム・ソクヒョンは、最年少で部長判事に上り詰めた敏腕判事。美しい妻と可愛い娘と3人で、幸せな生活を送っていた。しかしある日、妻が惨殺死体で発見される。ソクヒョンは女性記者から、「30年前に同じように最年少で部長となり、妻を殺されたハン・サンジュンという判事がいる」と聞かされる。しかし、その記者も殺されてしまった。ソクヒョンは30年前の事件を調べるうちに、ハン・サンジュンも殺されていたことを知る…。

＜Cheeseの解説＞
これは、自分の人生が、30年前に起きていた事件の当事者である判事の“パラレルライフ”であることを知ったエリート判事の物語です。

何事にも自信たっぷりで、満ち足りていると思っていた人生が、実は誰かの人生をなぞっているにすぎないと知った男の動揺や恐れを、サスペンスフルに描き出します。

過去の事件を調べるうちにわかってくる、複雑な人間関係。
過去の事件に登場してくるある人物が現代の事件のキーマンとして登場してきたり、過去の事件の登場人物を調べるうちに、現代の自分の周囲の人間たちの隠された面に気付いたり。

身近な人間の裏切りを知り、愛娘だけは守ろうと必死に戦うけれど、最後には自分すらも信用できなくなります。
自分の人生は、結局30年前のハン・サンジュン検事の焼き直しなのか？
どんなにあがいても、運命には逆らえないのか…？

サスペンスフルでスピーディな展開には、思わず手に汗握ります。
ばらまかれた伏線が、最後にひとつの真実に収束していく展開は、さすがの一言。
よく練られた脚本に感心してしまいました。

それにしても、今自分が生きている自分の人生の本当の形を、30年前の事件を通してしか正確に知ることができないと言うのはちょっと切ないものですね。
「平行理論」について、もっと調べてみたくなりました。

本作は、ドラマ「宮廷女官　チャングムの誓い」で人気を集めたチ・ジニが主演。
パリッとしたエリート検事が真実に気付き、取り乱し、どん底に突き落とされていく姿を泥臭く演じています。
検事の妻を演じるのはドラマ「プラハの恋人」のユン・セア。
古風な美貌が役柄にぴったり。女性の恐ろしさや浅ましさを見事に演じています。

Cheese的に気になったのはチ・ジニの部下を演じているパク・ビョンウン。
あまりメジャーな俳優さんではありませんが、佐々木蔵之介さん似のぎょろりとした目と、演技の豹変ぶりに釘付け。
これからの活躍を期待したいと思います。

『パラレルライフ』（110分／韓国／2010年）
原題：平行理論
英題：Parallel Life
公開：2010年7月24日
配給：CJ Entertainment Japan
劇場：シネマスクエアとうきゅうほか全国にて
監督・脚本：クォン・ホヨン
出演：チ・ジニ／イ・ジョンヒョク／ハ・ジョンウ／ユン・セア／パク・ビョンウン
公式HP：http://www.parallel-life.jp/