【映画レビュー】ワン・モア・ライフ! / Momenti di trascurabile felicità
ステレオタイプではありますが、イタリア人というと、“おおらか”、“いいかげん”、“情熱的”というイメージ。
イタリア男というと“女好き”というイメージがあります。
そんなイメージにぴったりな登場人物たちが登場するのが、この映画『ワン・モア・ライフ!』。
天国の役所の手違いで寿命よりちょっとだけ早くあの世に召されてしまったダメ男が、本来残されていた残りの時間を与えられ、天国にいく前に92分だけ人生を取り戻す……というこの物語。
主人公のパオロを演じるピフことピエールフランチェスコ・ディリベルト、天国の役人を演じるレナート・カルペンティエリら登場人物たちのキャラクターもどこかキュートな、イタリアらしいおおらかな人生讃歌でした。
<STORY>
イタリアのシチリア島・パレルモ。技師のパオロは愛する妻アガタと子どもたちと暮らしながら、気ままに生活を楽しんでいた。いつものように、赤信号ギリギリの交差点をスクーターで突破していた時、交通事故で即死してしまう。気付くと彼は天国の入り口で並んでいた。そこの役人に猛抗議したところ、役人たちの計算ミスが発覚し、92分間だけ寿命が延長されることに。自宅に戻ったパオロは残りの寿命を家族と過ごそうとするが……。
<解説>
“取るに足らない幸せの瞬間”という原題、“ありふれた幸せ”とでもいう英題を冠されたこの作品。
イタリアのシチリア島・パレルモを舞台に、天国の役人の手違いで本来の寿命より92分ほど早く死ぬことになってしまったダメ男が、本来の寿命をまっとうするため、家族たちの最期の時を過ごそうとする姿が描かれています。
舞台となっているシチリア島のパレルモは、ルキノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』の舞台にもなったところ。
1990年代までは犯罪組織コーザ・ノストラが牛耳る町としても知られていましたが、現在は地中海に面したロケーションが魅力の、風光明媚なリゾート地となっています。
そんなリゾート地で、人生で楽し意ことだけを追いかけて生きてきた中年男・パオロ。
愛する家族はいますが、その家族への愛を深く顧みることなく、浮気をしたり男同士でサッカー観戦を楽しんだり、その自覚もないままに自分勝手に生きてきたのです。
しかし、人生の残り時間が92分と知り、家族への愛に気づきます。そして、いかに自分が家族のことを考えていなかったかを知るのです。
果たして彼は、たった92分で家族への愛を証明し、家族からの愛を取り戻すことができるのか。
彼はパレルモの街中を疾走し、家族のために奔走するのですが……。
命や人生を描いた本作ですが、あくまでも軽いタッチで、どこまでも明るいコメディに仕上がっている本作。
その明るさの理由は、やはり主人公のパオロを演じるピエールフランチェスコ・ディリベルトの魅力にあるのでしょう。
決してイケメンではないけれど、どこか愛嬌たっぷりで、ダメ人間なのに憎めない……。
だからこそ、あんなに浮気を繰り返すしょうもない男なのに愛してしまう、妻のアガタの気持ちが理解できてしまうのです。
アガタを演じるトニー・エドゥアルトの包容力も素晴らしく、イタリア女性の肝っ玉を感じさせてくれます。
ピエールフランチェスコ・ディリベルトもトニー・エドゥアルトもパレルモ出身ということで、まさにパレルモらしい物語と言えるのかもしれません。
かねてから脚本家のフランチェスコ・ピッコロによる原作本「メンティ ディ トラスクラビレ フェリチタ(取るに足らない幸せの瞬間)」と「モメンティ ディ トラスクラビレ インフェリチタ(取るに足らない不幸の瞬間)」を気に入っていたダニエーレ・ルケッティ監督は、原作者のフランチェスコ・ピッコロと共に脚本を手がけた本作。
イタリアらしさ、パレルモらしさの詰まった、観光映画としても楽しむことができる、気楽に楽しめる一作でした。
劇中ではシチリア州立美術館、プレトーリア広場やカーポ市場、モンテ・ペッレグリーノなど、パレルモで人気の観光スポットが続々と登場し、観光客気分で楽しむこともできました。
『ワン・モア・ライフ!』(94分/イタリア/2019年)
原題:Momenti di trascurabile felicità
英題:Ordinary Happiness
公開:2021年3月12日
配給:アルバトロス・フィルム
劇場:全国にて
原作・脚本:フランチェスコ・ピッコロ
監督・脚本:ダニエーレ・ルケッティ
音楽:フランコ・ピエルサンティ
出演:ピエールフランチェスコ・ディリベルト/トニー・エドゥアルト/レナート・カルペンティエリ/アンジェリカ・アッレルッツォ/フランチェスコ・ジャンマンコ/ヴィンチェンツォ・フェッレーラ/マンフレディ・パンニッツォ
Official Website:https://one-more-life.jp/
映画チラシ ()
¥275 (コレクター商品)
Einaudi (2010-10-22T00:00:01Z)
¥13,099
紀伊國屋書店 (2011-09-24T00:00:01Z)
¥3,600