オー!ファーザー
どうしても中村義洋監督のイメージが強い、伊坂幸太郎作品の映画化。
ユーモラスなテンポと演出、ツイストの効いたストーリー、見事な伏線回収などが伊坂映画の特徴のような気がしていましたが、それはやっぱり監督の手腕でもあるのだなあと思わせてくれたのが、本作『オー!ファーザー』です。
母親一人、父親が四人(妊娠時に母親が四股をかけていて、現在はその四人の彼氏が全員「自分が父親だ」と言い張って一緒に暮らしている)という破天荒な家庭に暮らす高校生を襲ったある事件の顛末を、テンポのよい活劇として描いている本作。
さすが吉本興業製作だけあって、複雑な生い立ちから来る精神の葛藤などはまったく描かれず、シチュエーションコメディとして楽しませてくれる、監督の若さが際立つエンターテインメント作品と言えるでしょう。
<STORY>
高校生の由紀夫には、なぜか父親が4人いる。四股をかけていた母親が妊娠した時、父親たちは4人とも父親となることを望んだのだ。大学教授、高校の体育教師、ギャンブラー、元ホスト、それぞれ個性的な父親たちと由紀夫は仲良く暮らしていた。ある日、由紀夫はある事件を目撃。さらに、仲の良かった友人が不登校となり、何かの事件に巻き込まれているらしい…。そして由紀夫は、とんでもないトラブルの渦中に飛び込んでしまうのだった…。
<Cheeseの解説>
この映画の監督を務めたのは、1986年生まれの藤井道人監督。まだ20代の、新鋭監督です。
藤井道人監督がこの作品の監督となったのは、チームオクヤマの奥山和由氏に声をかけられたのがきっかけだそう。
原作者の伊坂幸太郎に映画化を申し込む際にたたき台となる脚本を用意するため、“陽の目を見ないことになるかもしれない脚本”を喜んで書いてくれる人材として選ばれたのだとか。
そして、紆余曲折あったものの、東日本震災後、「ただただ、エンターテインメントにしてもらいたい」という伊坂氏の条件のもとに、本作の映画化が動き出します。
そこで、監督として白羽の矢が立ったのが、脚本を手がけた藤井道人。
彼はその人柄を武器に(もちろん実力もあるのでしょうが)、弱冠25,6歳にして、あの吉本興業の製作、あのチームオクヤマの企画で、ある程度のバジェットの商業映画の監督の座を手に入れたラッキーボーイなのです。
そんなラッキーボーイが監督・脚本を務めたこの映画『オー!ファーザー』、やはりどこか若さを感じる作品です。
中村義洋監督作のように“どこかホロリとさせる”物語というよりも、エンターテインメントとして割り切って、四人の父親から愛を注がれてまっすぐ育った少年の成長をキラキラと描いています。
主人公の由紀夫を演じるのは、そろそろ高校生姿も見納めかと思われる岡田将生。
そして、由紀夫の父親を演じるのは、宮川大輔(体育教師の勲)、佐野史郎(大学教授の悟)、河原雅彦(ギャンブラーの鷹)、村上淳(元ホストの葵)という、まったく違うルックスと能力、魅力を持った四人。
由紀夫は彼らから、ケンカの仕方から手旗信号、勉強に女性の扱い方、いざという時の勝負感まで、様々なことを教えられ、スマートで魅力的な青年に育って来ているのです。
だけれども、若い頃は何かのトラブルに巻き込まれやすいもので、由紀夫はある事件に首を突っ込み、絶体絶命のピンチを迎えてしまいます。
そんな由紀夫を救うのは、それぞれに特異な能力やコネクションを持つ四人の父親。
彼らのこれまでの教えや、由紀夫との思い出、積み重ねて来た経験が、由紀夫を助けていくのです…。
一風変わった父子像を描いた本作『オー!ファーザー』は、軽い気持ちで楽しめるエンターテインメント作品。
父親同士の友情、父と息子とのチームワークなども楽しめる、ちょっと明るい気分になれる一作です。
『オー!ファーザー』(103分/日本/2014年)
公開:2014年5月24日
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場:角川シネマ新宿、テアトル梅田ほか全国にて
原作:伊坂幸太郎
製作総指揮:奥山和由
監督・脚本:藤井道人
出演:岡田将生/忽那汐里/宮川大輔/佐野史郎/河原雅彦/村上淳/柄本明/賀来賢人/駿河太郎/古村比呂/長江英和/広岡由里子/長原成樹/榊原徹史/内田慈/橋本マナミ/矢島健一
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/oh-father/
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