【映画レビュー】わたしを離さないで / Never Let Me Go
キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイという英国出身の実力と人気を兼ね備えた若手俳優が顔を揃えた映画『わたしを離さないで』。
イギリスの美しい自然の中で、哀しい運命に翻弄される若者たちの姿を、切なく描いています。
ある意味、とても無気力な彼らの姿は、とても印象的。
自分たちの運命を素直に受け入れ、多少悩んだり逡巡したりはするけれど、反発心を表現することなく、静かにあきらめて行く彼らの姿は、逆に言うとかなり日本の若者の姿に近いのかもしれません。
そういう意味では、原作者のカズオ・イシグロが日本生まれでイギリスに帰化した英国人であるというのは、なかなかに示唆的な気がします。
<STORY>
寄宿学校“ヘールシャム”で暮らすキャシー。幼い頃から、外界と隔絶したこの学校で、ルース、トミーという仲間たちと一緒に大きくなった。18歳となり、彼ら3人はヘールシャムを出て、農場のコテージで他の仲間たちとともに暮らすこととなる。キャシーとトミーはひかれ合っていたが、ルースがトミーとつきあい始める。ある日、仲間が街でルースにそっくりな女性を見かけたという。彼らはその女性を見に、初めて外の街に出かけて行く…。
<解説>
イギリスの文学賞・ブッカー賞作家カズオ・イシグロ原作の小説を映画化した本作。
現在より少し前の時代を舞台にした詩情豊かな作品ながらも、扱っている事象はSF的というか、近未来的な内容です。
“人工的に作り上げた存在に人権はあるのか…”
私が思うに、日本の現在の一般的な常識でいうと「ある」の一言で終わってしまう話ですが、キリスト教の影響を受けている国では、これは難しい定義なのかもしれません。
“神が作りたもうた存在”ではない者がどう扱われるのか…、そこは、その人物の持つ宗教観により、まったく違ってくる可能性もありますね。
この作品に出演しているのは、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなどでおなじみのキーラ・ナイトレイ、『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、『ソーシャル・ネットワーク』のアンドリュー・ガーフィールドなど、錚々たる若手実力派俳優たち。
この作品で見ることができる友情の美しさ、そして友情ゆえの嫉妬や、友情ゆえの諦念などは、彼らの素晴らしい演技力ゆえに表現することができたものだと思います。
観賞後、どうにもやりきれない思いになってしまう本作。
でも、医療技術がさらに発達していくであろうこれからの未来に向けての、大事なテーマを問いかけている一作だと思います。
最後に…。
この作品の字幕では“Completion”を“終了”と訳していましたね。
個人的には“完了”の方がしっくりくる気がするなぁ。
内容的にも、その方が救われる気がします。。。
【関連作レビュー】
■【本】わたしを離さないで / カズオ・イシグロ:http://c-movie.jp/book/never-let-me-go_book/
『わたしを離さないで』(105分/イギリス=アメリカ/2010年)
原題:Never Let Me Go
公開:2011年3月26日
配給:20世紀フォックス映画
劇場:TOHOシネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国にて
原作・製作総指揮:カズオ・イシグロ
監督:マーク・ロマネク
出演:キャリー・マリガン/アンドリュー・ガーフィールド/キーラ・ナイトレイ/シャーロット・ランプリング/サリー・ホーキンス/アンドレア・ライズボロー
公式HP:http://movies.foxjapan.com/watahana/
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