【映画レビュー】いのちのコール~ミセスインガを知っていますか~
子宮頸がんという、女性にとって身近な病気を描いた映画『いのちのコール~ミセスインガを知っていますか~』。
影響されやすい私は、ちょうど健康診断の時期だったこともあり、早速、子宮頸がんの検査を受けてきました。
言葉ではよく聞いているものの、どんな風な病気かは具体的に知らなかったのですが、この作品を観て、この病気について知らなくてはならないと思うようになりました。
実際に子宮頸がんに罹患し、お亡くなりになった渡邉眞弓氏が企画したこの映画。
見知らぬ人と人とのつながりの温かさを感じさせつつ、病気について知らない人を啓蒙してくれる、優しい映画です。
<STORY>
女子校教師のたまきは婚約者の高志と同棲を始める。猫のインガと共に幸せな生活を送っていたが、たまきが子宮頸がんであることが発覚。高志に支えられながら、子宮と卵巣の全摘手術を受けるのだった。2年後、横浜のFM局の人気番組「サンディ・ジェットストリーム」の最終回に、インガと名乗る女性から電話が入る。DJのマユミはインガが子宮頸がん患者で、これから自殺しようとしていることを見抜き、引き止めようとするが…。
<解説>
この映画の主人公は安田美沙子演じる女子校教師・たまき。
でも、たまきは劇中にあまり登場しません。
たまきが主に登場するのは、映画冒頭。
山口賢貴演じる高志と同棲を始め、幸せいっぱいのところから、子宮頸がんを告げられるまでが、彼女の主な登場シーンです。
そして、劇中ではあっという間に2年が過ぎ、物語を動かすのは室井滋演じるラジオDJ・マユミに変わります。
マユミは横浜のFM局で「サンディ・ジェットストリーム」という番組を担当している人気DJ。
その「サンディ・ジェットストリーム」の最終オンエアの日、インガと名乗るリスナーから電話が入るのです。
マユミは、彼女が自殺をしようとしていることに気付き、ラジオ上で必死で呼びかけます。
そして、わずかな情報からインガが子宮頸がん患者だということに気付き、彼女を救うため、番組の内容を変更していくのです。
マユミはリスナーに呼びかけ、インガと同じ子宮頸がん患者たちに電話インタビューを行います。
子宮頸がん患者のリスナーたちは、自分の辛い思い出や対処法などを口々に語ります。
子宮頸がん患者のリスナーたちの体験は、他の子宮頸がんたちも体験していること。
これまで子宮頸がんのことを知らなかったリスナーたちも、この病気について知るようになり、子宮頸がん患者がいわれのない差別を受けて辛い思いをしていることを知るのです。
そして、インガ(たまき)が無意識のうちにマユミに送った小さなSOSは、大きな善意の環になってインガ(たまき)を救おうと動き出します。
やがて、マユミ、スタッフ、出演者、リスナーの善意が、広い横浜のどこかにいるインガを探し出すのです。
この映画の脚本のうまいところは、たまき(インガ)の辛い体験を直接見せないところ。
他の子宮頸がん患者たちの言葉を通じ、観客にたまきの辛い体験ややるせない思いを伝え、彼女が自殺するまでに思い詰めるようになった経緯を、間接的に伝えているのです。
まあ、インガの居所が、少しご都合主義的な感もありますが…。
タイムリミットのある中での謎解き、鉄ちゃんトリビアなど、なかなか面白いので、そこはそれで。
私がたまきだったら、横浜のランドマークタワーにある横浜ロイヤルパークホテルあたりを選ぶと思うけど、それじゃあきっと発見できませんもんね。。。
あ、それと、主人公が横浜在住ということで、物語のほとんどは横浜で展開します。
かなりメジャーなところでロケされていたりするので、横浜近辺にお住まいの方なら、「お、これはあそこね」などと楽しめると思います。
『いのちのコール~ミセスインガを知っていますか~』(86分/日本/2013年)
公開:2014年6月7日
配給:リトルバード
劇場:シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
企画:渡邉眞弓
監督:蛯原やすゆき
出演:安田美沙子/室井滋/山口賢貴/国広富之/筒井真理子/榊英雄/日野陽仁/小林さり/風祭ゆき/大西結花/中野良子/岡本富士太/大和田伸也
公式HP:http://www.mrs-inga.com/
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