【映画レビュー】ミナリ / Minari
韓国系移民としてアーカンソー州の小さな農園で育ったリー・アイザック・チョンが、1980年代のアメリカを舞台に、韓国系移民のアメリカン・ドリームを描いた映画『ミナリ』。
エンドロールにひっそり「TO ALL GRANMA」の文字が流れます。
これはまさに、監督が自身の祖母に捧げた物語と言えるでしょう。もちろん、ご両親にも。
第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(スティーヴン・ユァン)、助演女優賞(ユン・ヨジョン)、作曲賞の計6部門にノミネートされ、第78回ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞した本作。
アメリカでアジア系移民が大変な思いをし、韓国系女性に悲劇があった2021年。
今だからこそ、多くの人にこの作品を観て欲しいと思うし、ユン・ヨジョンには助演女優賞をとって欲しいと思います。
※追記:第93回アカデミー賞で、ユン・ヨジョンは助演女優賞を受賞しました。
STORY
1980年代。アメリカ、アーカンソー州の高原に韓国系移民の家族が引っ越してきた。父・ジェイコブは韓国野菜の農場を成功させるアメリカン・ドリームを抱いていた。母・モニカはトレーラーハウスでの生活に不満を抱く。病気を抱える7歳のデヴィッドはしっかり者の姉のアンと一緒に、アーカンソーでの生活を楽しんでいた。そんなある日、母方のおばあちゃんもアメリカにやってきた。彼女の破天荒さに、デヴィッドは最初戸惑っていたが……。
解説
この物語の主人公となるのは、知る人もいないアメリカの地に移住してきて、新たに生活を始めたひと組の家族です。
韓国野菜を栽培して一旗揚げることを夢見る父・ジェイコブ。
ヒヨコの鑑別で家計を支えながら、生活の不安から夫のことを素直に信じきれない母・モニカ。
両親と弟を見守るしっかり者の長女・アン。
心音の異常があり、走ることを禁止されながらも、新しい生活に胸を膨らませている7歳の長男・デヴィッド。
そんな4人のためにアメリカにやってきたのが、モニカの母であるおばあちゃん。
友だちもおらず、ストレスから怒ってばかりいるモニカのために、はるばる海を越えてやってきました。
このおばあちゃん、7歳の子どもに花札を教えるわ、言葉は乱暴だわ、かなりの破天荒さ。
しかし、苦労を乗り越え生き抜いてきた人ならではの“おばあちゃんの知恵”で、一家を和ませていきます。
おばあちゃんは、その強さ、したたかさ、ひょうきんさ、ちゃっかりさで、家族を変えていくのです。
しかし、おばあちゃんは病に倒れてしまいます。
ある意味、彼女が一家にかかるべき呪いを一身に引き受けたとも言えます。
そして、彼女が灯した火が、結果的に、家族の問題を浄化していくのです。。。
おばあちゃんは、大地に流れる川に香味野菜のセリ(韓国語ではミナリと言います)を植えました。
たくましくその地に根を張り、独特のクセのある味で食卓を彩るセリは、どの土地の料理をもおいしくしていきます。
韓国式にこだわり、韓国式のやり方で生きようとしていた韓国人の家族は、やがてアメリカに根を張り、韓国式とアメリカ式をミックスしたやり方で韓国系アメリカ人の家族になっていくのでした。
アメリカは、誰もが移民の先祖を持ち、多くの人が地域のキリスト教コミュニティの中で居場所を築いてきた土地。
アメリカに生きる人にとっては、この物語は“アメリカの家族の物語”であり、“私の祖先の物語”であり、“私の物語”であるのかもしれません。
それにしても、あの水脈を見つけるためのダウジング、どのくらい効果があるのでしょうか。
自分たちに伝わってきた知恵と、昔ながらのその土地に伝わる知恵と二つを合わせて活用していくことで、彼らが自分たちならではの道を切り開いていけたのかもしれません。。。
作品情報
『ミナリ』(115分/アメリカ/2020年)
原題:Minari
韓国題:미나리
公開:2021年3月19日
劇場:TOHOシネマズ シャンテほか全国にて
監督・脚本:リー・アイザック・チョン
製作総指揮:ブラッド・ピット/ジョシュ・バーチョフ
製作総指揮・出演:スティーヴン・ユァン
音楽:エミール・モッセリ
出演:ハン・イェリ/ユン・ヨジョン/ウィル・パットン/スコット・ヘイズ/アラン・キム/ネイル・ケイト・チョー/ダリル・コックス/エスター・ムーン
Official Website:https://gaga.ne.jp/minari/
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