【映画レビュー】瞬 またたき
ドラマに映画に大活躍の北川景子が、バイク事故で恋人を亡くした女の子を演じる映画『瞬 またたき』。
ストーリー自体は、まあ、わかりやすいというか、とりたてて特筆するべきものもない作品なのですが、この映画には北川景子の魅力がたっぷり詰まっているように思います。
あえて言うならば、北川景子の“何者でもなさ”というのでしょうか。
大人でもなく子どもでもなく、少女でもない。学生でも社会人でもない。
大事な記憶を亡くし、現在に生きる意欲も見出せないでいる。
そんな、宙ぶらりんのあやうい雰囲気と、そんな自分に苛立ち、記憶を取り戻そうともがく姿が、今の彼女にぴったりとはまっていました。
<STORY>
叔母の経営する生花店で働く泉美は、恋人・淳一をバイク事故で亡くしていた。桜を観に行こうと二人でバイクで向かっている最中にトラックと衝突し、淳一だけが亡くなったのだ。怪我だけで済んだ泉美だが、事故の記憶がない。思い出そうとメンタル・クリニックに通う泉美を、家族は優しく見守っていた。ある日、泉美は弁護士の真希子と知り合う。泉美は彼女に事故原因の解明を依頼し、彼女の助けを借りて記憶を取り戻そうとする…。
<解説>
事故の記憶を取り戻そうとする泉美を演じる北川景子。
映画に登場してからしばらくは、セリフも棒読みで、無表情であまり感情を顔に表しません。
正直、「演技下手だなー」と思っていました。
でも、物語が進んで行くにつれて、セリフにも感情がこもり、いろいろな表情が浮かぶようになります。
物語のクライマックスに当たる事故シーンの演技は、素晴らしく感情がこもったもの。
冒頭の無表情さは、恋人を亡くし、感情の表出すらできなくなった状態を表す演技だったのですね。
最初が無表情だったからこそ、淳一との回想シーンの彼女の生き生きした表情や笑顔が、ますます引き立っていました。
それに気付いた時「北川景子…あなどれん」と、思わずうなってしまいました。
彼女は、ナチュラル・メイクに(じゃっかんダサめの)カジュアル・ファッションで登場します。
その“飾らなさ”がますます彼女の美しさを引き立てていました。
バチバチにメイクしなくても、なんでもないブラウスとスカートだけでも、きれいな人はやっぱりきれいなんですね。
この映画は『解夏』、『船を降りたら彼女の島』などで知られる磯村一路が監督を務めています。
磯村監督と言えば、美しい自然の中で、女優さんのナチュラルな美しさを引き出す演出で知られる人です。
北海道と出雲を舞台にしたこの作品でも、まさしくその手法が活かされていました。
北海道のシーンでは、自然の中にいてもどこかくすんでいるというか、どこか淡い色調に満たされています。
美しい中にも、北海道の寒さや厳しさ、そして泉美の心象がうかがえる、生命感の乏しさがありました。
そして、淳一の生地である出雲を泉美が訪れる場面では、“生と死の境界線”と言われ、古事記に出てくる“黄泉比良坂(よもつひらさか)”だと言われるパワースポット・伊賦夜坂(いふやざか)でロケが行われています。
萌え立つようなあざやかな緑の中に北川景子が立っている映像は、磯村作品らしい美しさにあふれていました。
と、まあ北川景子のことばかり書いて来ましたが、恋人役の岡田将生もなかなかの好演をみせています。
でもまあ、やはりこの映画は北川景子のための映画だと思います。(※)
『瞬 またたき』(110分/日本/2010年)
公開:2010年6月19日
配給:S・D・P
劇場:新宿バルト9ほか全国にて
原作:河原れん
監督:磯村一路
出演:北川景子/大塚寧々/岡田将生/田口トモロヲ/清水美沙/深水元基/新川優愛
公式HP:http://www.matataki-movie.jp/
※“北川景子”という単語、本文中に8回も出て来ます。ちょっとしつこかったか。。。
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