【映画レビュー】超高速！参勤交代

日本史の時間に必ず習い、言葉としてはよーく知っている“参勤交代”。

しかし、その実態は果たしてどんなものだったのか？
何人くらいがどのくらいの時間をかけて、江戸と国元を往復しているのか？

そんな疑問に、意外な答えを与えてくれるのが、この映画『超高速！参勤交代』。
超高速で国元から江戸に向かう大名と、その部下たちの埃まみれの奮闘を描いています。

しかし、いくらなんでも福島から東京まで走って向かうとは…。
いやー、江戸時代の人って、ホントに健脚だったんですね。。。

磐城国湯長谷藩（現在の福島県いわき市）藩主・内藤政醇が、幕府の老中・松平信祝からの疑いを受け、「江戸まで5日で参勤せよ」という不可能な命を受け、プライドにかけて5日での参勤交代を成し遂げようとする姿を描くこの映画。

時間もなく、さらにお金もない湯長谷藩の武士たちは「金がないなら知恵を出せ、知恵がないなら汗をかけ」とばかりに、通常8日かかる道のりを5日で行くための方策を必死で考えます。
そして、知恵を絞って考えた、5日で江戸に着くための机上の論理を実証するため、まさに汗をかきかき走るのです。

民の幸せを何よりも考えている、人柄の良い殿様の内藤政醇を演じるのは、佐々木蔵之介。
そして、彼を支え、共に江戸への道をひた走る家老の相馬兼嗣ら6名の部下を演じるのは、西村雅彦、寺脇康文、上地雄輔、知念侑李、柄本時生、六角精児ら、キャリアも年齢もバラバラな実力派俳優たち。
時に旅支度、時にふんどし一丁になりながら、侍の矜持をまさしく体で表現しています。

彼らは陣内孝則演じる悪の老中の企みをくだくため、いわきから高萩へ、高萩から牛久へ、牛久から取手へと、山道や道なき道を進み、川や井戸に落ち、襲い来る刺客と戦いながら進んでいきます。
でもまあ、そんな過酷な道中でも、殿は恋に落ちたりもしているわけですが…。

不可能なミッションを遂行するために知恵を絞り、過酷な道のりをユーモアとお互いの信頼関係で乗り切る武士たちの姿を描く本作『超高速！参勤交代』、これはなかなかユニークな時代劇。
最後の方は若干やり過ぎな感もありますが、それは本木克英らしいエンターテインメント性と割り切って楽しみたいところ。

最悪な状況を、忍耐力と人間力を持って乗り越え、未来を切り拓いていく湯長谷藩藩士たちの姿は、いわきの人びとにも勇気を与えることでしょう。