【映画レビュー】マレフィセント ／ MALEFICENT

妖精・マレフィセントは、人間の国からやって来た少年・ステファンと恋に落ちる。だが、出世を目指すステファンは、マレフィセントの翼を奪い去ってしまった。やがて時が経ち、人間の国の王となったステファンに美しい王女・オーロラ姫が生まれた。しかし、姫の誕生を祝うパーティーに現れたマレフィセントは、姫に呪いをかける。オーロラ姫は三人の妖精に託され森の中で育てられるが、マレフィセントはずっとオーロラ姫を監視していた…。

アニメ映画『眠れる森の美女』の名悪役マレフィセントをアンジェリーナ・ジョリーが実写で演じた映画『マレフィセント』。

純粋な心を持ちながらも、男に裏切られ傷ついたが故に邪悪になってしまった妖精マレフィセントを、アンジェリーナ・ジョリーは、威厳とユーモア、そして哀しさと愛らしさを絶妙なバランスで表現しながら演じています。
そして、見る者すべてを魅了する薔薇色の頬をした天真爛漫なオーロラ姫を演じるのは、エル・ファニング。

これ以上はないというくらいのぴったりのキャスティングで、おなじみのフェアリー・テイルを現代に蘇らせた本作。

ここに登場するのは、無知で世間知らずだったが故に、未来への翼をもぎ取られ、意に染まぬ生き方をさせられることになってしまった女性。
そして、自分と最も近しいはずの人物に、自分への呪いの原因を作られてしまった何も知らない無垢な少女。
（でも、その少女は、その魅力と才能が故に、知らず知らずのうちに自分に課せられた呪いを断ち切り、敵をも味方にしてしまっていますが…）

彼女たちは、まさに現在を生きる母親世代の女性の象徴であり、母世代から夢を託される娘世代の象徴なのかもしれません。
娘のように愛情を注げる存在は、必ずしも自分の実の血を引く存在ではいいという点でも、アンジェリーナ・ジョリーというキャスティングは、まさに絶妙。
そういう意味では、マレフィセントの傍にいつもくっついていて、彼女の望む通りの姿に変身し、マレフィセントの命令に忠実に応えるサム・ライリー演じるカラス・ディアヴァルはブラッド・ピットを象徴していると言えるのかもしれません。

顔がいいだけのプリンスや女を都合良く扱う男を切り捨て、女性だけで未来を切り拓いていく姿を描いた映画『マレフィセント』。
女性である私は楽しめましたが、男性はこれをどう受け止めたのでしょうか。。。
古き『眠れる森の美女』の時代とは違い、これからの未来はジェンダー的なくびきを捨て、妖精のように生きていく人間が増えていくであろうことを表現した、ある意味、とても象徴的な映画だと思います。