【映画レビュー】マシンガン・プリーチャー ／ Machine Gun Preacher

この作品の主人公のサム・チルダースは、とにかく過剰な人物として描かれています。
若いうちはありあまるエネルギーをワルい方向に滾らせ、バイクと麻薬と酒に溺れていたものの、妻のリンの愛で宗教に目覚め、改心。
もともとエネルギーはあるので精力的に建築業に精を出し、仕事は見事に成功します。
仕事に成功したら、教会に通うだけでなく、自分で教会を建てちゃったりもします。

こう考えると、何か、エネルギーを注いで打ち込めるものを探していたようにも思えます。

そして、ウガンダにボランティアに行った時に出会ったのが、LRAに怯える子どもたち。
親を殺され、自分も殺されるかもしれず、少年兵として人を殺させられるかもしれない。
命も、明日も、食べ物も、一晩寝れば亡くなっているかもしれない状況で怯えて生きている子どもたちです。

そんな子どもたちに出会い、スーダンに孤児院を建てることにより、彼は心血を注いで打ち込めることに出会ったのでしょう。
自分のありあまるエネルギーを活用でき、子どもたちの命を救うこともでき、自分も満足できる。

でも、そのありあまるエネルギーゆえに、彼はやりすぎてしまったりもします。
建設業で稼いだお金もなくなり、実の子には「私よりスーダンの子どもの方が大事なの？」と泣かれ、友だちをなくし。
でも、彼は自分の道を信じて進み続けます。
だって、「子どものため」「人助けのため」なのだから。

マーク・フォースター監督は、サム・チルダースがエゴで動いている部分も、きちんと描いています。
サム・チルダースは、ただの聖人ではなく、“ダメな部分”、“身勝手な部分”、“弱い部分”もある人間で、“マシンガン・プリーチャー”であることが、彼を彼たらしめているのです。

だから、彼が「自分は善行をしている素晴らしい人間だ」と思い始めた時、人は彼から離れていきます。
そして、「自分はダメな人間で、子どもたちや周囲の人たちに助けられているのだ」と気付いた時に、みな彼のもとに戻ってくるのでした。

この映画『マシンガン・プリーチャー』は、サム・チルダースをただ讃えるのではなく、今ウガンダで起きている出来事を映し出し、私たちに教えてくれます。
人はサム・チルダースの行為について、いろいろと口にするでしょう。
でも、“何もしていない人”は、“何かしている人”に対して、何を言う権利もないような気はします。