【映画レビュー】リトル・フォレスト 冬・春
いよいよ『リトル・フォレスト 冬・春』が公開されます。
私、実は前作『リトル・フォレスト 夏編・秋編』が大好きで、この作品が橋本愛ちゃんを女優として一回り成長させたのではないかと思っているほど。
無理な自然礼賛、ロハスライフ礼賛ではなく、ただ“自然の中で生きる女の子の日常”を描くこの連作、後半の冬・春編で、主人公たちの成長を見事に描き出してくれました。
主人公・いち子の選択と決断、地元でずっと暮らし続けて来た老人たちの深い言葉と味わいのある顔、キッコとユウ太らの決意に、「いい映画だったな…」と、大きな満足感を感じさせてくれた一作でした。
STORY
東北地方のとある村の中の小さな集落、小森で農業をしながら一人暮らしをしているいち子。彼女の元に、かつていち子を置いて一人で家を出た母・福子から手紙が届く。いち子はその手紙を何度も読み返しながら、毎日食べ物を作って料理して生活していく。冬は保存していた野菜を使って、様々な料理を。クリスマスには甘酒とかぼちゃの3色ケーキを友人のキッコ、ユウ太らと食べるのだった。そして、寒さが和らぎ、生命が芽吹く春がやって来る…。
解説
ちょっと村の中心まで行くにも自転車で30分、冬はのんびり歩いて一時間半かかるような東北地方の山奥の集落・小森に、たった一人で暮らしているいち子の一年を描く本作。
車がないと隣町にも行けない山奥で車も持たず、米から野菜から一人で作って暮らしているいち子。
特に持続的にどこかで働いているようでもなく(ちょいちょい近所の手伝いはしているようですが)、収入源も不明です。
野菜だって、自給自足と言えば聞こえはいいですが、はっきり言って買って来た方がコスト的には合理的なのに、手作りを続けている彼女。
はっきり言って、現代に生きる20代女性としてはかなり変わった生活を送っています。
前作、『夏・秋編』ではなぜそんな暮らしをしているのか、ちょっとわかりませんでした。
でも、本作では、なぜ母親が出て行ったのかを少しいち子が理解し始め、それとともに観客にもなぜいち子がそんな暮らしをしているのかがわかってきます。
自然の中で現代社会から隔絶された生活をすると言うのは、ある種“現代社会から逃げる”こと。
それを、毎日畑や田んぼでやることの多い自給自足の生活の大変さでごまかしていたいち子は、自覚していきます。
そして、自分の意志で、自分の未来を決めて行くのです。
決断から逃げて、流されてたどり着いた先での生活と、自分が選び取って意志を持って暮らし始めた先での生活では、同じような生活でも未来はまったく違ってくるはず。
いち子の決断は、観客にそれを教えてくれます。
いやー、ほんと、軽い気分で「田舎でロハスな生活したーい」なんて言っている人には、ぜひこの作品を観て欲しいもの。
田舎生活の大変さとめんどくささ、それと共に得るものの大きさも教えてくれると思います。
うん、私には無理ですけどね。。。
あ、最後になりましたが、いち子たちの作る料理、今作でも本当に美味しそうです。
納豆もちにあずきマフィン、わらびのおひたしにふきのとうで作るばっけ味噌、塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタなどなど…。
新鮮な素材を使った出来立ての料理の数々を、立ったまま菜箸でふーふーと頬張るいち子を見ていると、出来立ての手作り料理を食べることのぜいたくさを実感しますね。
作品情報
『リトル・フォレスト 冬・春』(120分/日本/2015年)
公開:2015年2月14日
配給:松竹メディア事業部
劇場:全国にて
原作:五十嵐大介
監督・脚本:森淳一
音楽:宮内優里
フードディレクション:eatrip
出演:橋本愛/三浦貴大/松岡茉優/温水洋一/桐島かれん/岩手太郎/北上奈緒/佐藤さち子/千葉登喜代/小島康志/篠川桃音/照井麻友
公式HP:http://littleforest-movie.jp/ws/
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