【映画レビュー】ローズメイカー 奇跡のバラ / La Fine fleur
『大統領の料理人』など、フランスの大女優として知られるカトリーヌ・フロが新種のバラを開発するバラの育種家を演じる映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』。
バラを愛し、バラを育てることのみに人生を賭けてきた女性が、これまで会ったことがなかったタイプの人々と交わることによって、新たな人生の扉を開いていきます。
バガテル国際バラ新品種コンクールの様子から始まる本作。
色とりどりのバラを見ることができ、新種のバラを開発するローズメイカーの舞台裏もわかる本作、花好き、バラ好きの人にとってはたまらない一作と言えるでしょう。
STORY
新種のバラを開発する育種家として、かつては数々の賞に輝いてきたエヴ。しかし今、父から受け継いだバラ園は赤字続きで、倒産の寸前の状態だ。そんな時、エヴの助手のヴェラは、職業訓練所から格安で3人の従業員を連れてきた。前科者の若者・フレッドに、定職につくことしか頭にないサミール、内気でコミュニケーションが苦手なナデージュ。園芸素人の3人はさっそく失敗し、温室の温度調整を間違って200鉢のバラを枯らしてしまう……。
解説
本作でカトリーヌ・フロが演じるエヴは、かつては何度もバラの新品種コンクールで優勝してきた有名な育種家ですが、今は広大なバラ園が赤字となってしまい、経営にも苦労している女性です。
有能で忠実なアシスタントのヴェラ(オリヴィア・コート)が事務面では支えてくれていますが、バラ栽培の方では人が足りません。かといって、正規の料金で人を雇う余裕もなく……。
そこでヴェラが一計を案じ、職業訓練所から訳ありの3人を連れてきたのです。
その3人の中でも、窃盗の前科を持つタトゥーだらけの若者・フレッドは、エヴにも反抗的で、少し困った存在でした。
しかし、エヴはフレッドより上手でした。
なんとしても次のバラコンクールで優勝したいエヴは、新しいバラの交配を考えつきますが、その掛け合わせに必要なバラの一種が、ラマルゼルバラ園という大規模バラ園にしかないことを知ります。
そこで、訳ありの3人とともにバラを盗み出すという計画をたて、フレッドの特技を利用してしまうのです。。。
そうやって秘密を共有したり、作業をともにしたりするうちに、彼らの間には仲間意識と信頼関係が芽生えていきます。
そして、エヴはフレッドの意外な才能を発揮し、それを育てようとするのです。
言ってみれば、バラにしか興味がなく他に何もないエヴも含め、親に見捨てられ非行に走るしかなかったフレッド、家族も職もないサミール、内気すぎて人とうまく関係を築けないナデージュ、彼らはみんなはみだし者。
そんなはみだし者の彼らが、バラを育てるという作業を通じて、疑似家族のような関係になっていくのです。
バラを育てるというのは芸術的な感性と生物学的な知性、そして才能と技術が必要なうえに、自然と運からも味方されなければならないもの。ある意味、子育てと似ているとも言えます。
フランスで大女優として知られるカトリーヌ・フロの安定の演技はもちろん、フレッドを演じるラッパーのメラン・オメルタが見せる繊細な演技も見ものです。
タトゥーやヒゲで悪そうに見せていた彼が、本当の母親に会ったり、エヴや仲間たちと心を通わせていくことでだんだんと変化していきます。
美しいバラの世界と、そのバラを育てるために土にまみれる人々の努力、そしてバラへの偏愛。
劇中に登場するアンナプルナ、ライオン、ソレイユドールなどの色とりどりのバラも美しく、バラ好きにはたまらないのではないでしょうか。
すべてのシーンにバラが登場している本作、泥くさい人間らしさに満ちた、とても美しい一作でした。
作品情報
『ローズメイカー 奇跡のバラ』(96分/フランス/2020年)
原題:La Fine fleur
公開:2021年5月28日
配給:松竹
劇場:新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて
監督・脚本:ピエール・ピノー
脚本:ファデット・ドゥルアール/フィリップ・ル・ゲイ
音楽:マチュー・ランボレ
出演:カトリーヌ・フロ/メラン・オメルタ/マリー・プショー/オリヴィア・コート/ファツァー・ブヤメッド/ヴァンサン・ドゥディエンヌ
Official Website:https://movies.shochiku.co.jp/rosemaker
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