【映画レビュー】夜は短し歩けよ乙女
『四畳半神話大系』の原作者・森見登美彦&監督・湯浅政明コンビが再びタッグを組んだアニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』。
不思議な世界観の中で楽しく物語が展開し、乙女と一緒に夜の京都を歩きたくなる、そんな素敵で素直でこじらせた一作。
個性あふれる登場人物たちと、詭弁踊りを踊りながら偽電気ブランを飲み、学園祭や古本市に繰り出したい…。きっと誰もが、そんな気持ちになってしまうはず。
STORY
京都にあるとある大学に通う冴えない大学生“先輩”は、後輩である“黒髪の乙女”に恋をし、「なるべく彼女の目にとまる」という「ナカメ作戦」を実行していた。ある夜、仲間たちの結婚式のあった日、乙女は夜の京都に繰り出す。そこで酒好きの樋口師匠や羽貴さんたちと知り合い、富豪の老人・李白と酒の飲み比べをすることに。軽やかに李白に飲み勝った乙女は、さらに夜の街を練り歩く。その夜は学園祭や古本市なども行われており…。
解説
2006年に発表された森見登美彦のベストセラー小説「夜は短し歩けよ乙女」。第20回山本周五郎賞を受賞し、角川書店の「大学生が選んだ本」第1位に何度も選ばれています。
本作ではこの小説を、原作のイラストを手がけた中村佑介のキャラクター原案をそのままに、カラフルでシュールな絵柄でアニメーション化しています。
この作品、草食系のこじらせ男子という現代的なキャラクターを描きながらも、どこか1970年代・80年代の作品ような理屈っぽさやモノローグの多さを感じさせます。
登場するキャラクターたちも、大酒飲みの美女や“天狗”を自称する男、孤独で偏屈な大富豪、同じパンツを履き続けているパンツ総番長など、摩訶不思議で魅力的な人々ばかり。
この摩訶不思議なキャラクターたちが、京都の夜を飲み歩き、歌って踊ってお芝居などをしていくのです。
湯浅政明監督は、アニメという表現方法で、このキャラクターたちを自在に動かし、京都の街の摩訶不思議さを見事に表現しています。
この作品に登場するキャラクターたち、ほとんどが魅力的で濃いキャラクターばかりなのですが、やはりそのなかでもっとも魅力を放つのは、“黒髪の乙女”。
初々しくしなやかで、でもしっかりとした芯の強さを持った彼女、京都の街で濃いキャラクターたちに堂々と対峙し、時には飲み比べ、時にはおともだちパンチを見舞いながら、自分の存在すべき場所を作り上げていきます。
そんな彼女に恋をしている“先輩”は、肥大した自我をこじらせ、乙女に自ら告白もできず、自ら会いにも行けない頭でっかちな男。
21世紀でいちばんこじらせ男子の似合う男・星野源の声とも相まって、なんとも情けなく、でもどこか手を差し伸べたくなるような、どうしようもなさに満ちています。
そんな先輩に向かって一晩歩いて近づいてきてくれる“乙女”は、先輩を自我から解放する天使のような存在と言えるでしょう。
こんな乙女は現実には絶対にいないけれど…、現代の草食大学生男子には、やはりこういう“黒髪の乙女”が理想の存在と言えるのかもしれませんね。
作品情報
『夜は短し歩けよ乙女』(93分/日本/2017年)
公開:2017年4月7日
配給:東宝映像事業部
劇場:全国にて
原作:森見登美彦
監督:湯浅政明
脚本:上田誠
キャラクター原案:中村佑介
音楽:大島ミチル
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION 「荒野を歩け」
声の出演:星野源/花澤香菜/神谷浩史/秋山竜次/中井和哉/甲斐田裕子/吉野裕行/新妻聖子/諏訪部順一/悠木碧/檜山修之/山路和弘/麦人
Official Website:http://kurokaminootome.com/
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