【映画レビュー】キツツキと雨
『南極料理人』の沖田修一監督が、映画撮影の地方ロケでの若手監督と60歳の木こりのおじさんとの交流を描いた映画『キツツキと雨』。
実際に映画監督の経験を持つ小栗旬がが主人公の映画監督を、木こりのおじさんを役所広司が演じています。
小規模な映画撮影現場の“現場あるある”や、沖田監督自身の体験談なども盛り込まれており、映画ファンにはうれしい作品と言えるでしょう。
<STORY>
山間の村に、ホラー映画の撮影隊がやって来た。偶然その撮影隊と出会った60歳の木こり・岸克彦は、彼らの撮影を手伝うこととなる。現場を仕切らなければならないはずの監督の田辺幸一は、スタッフたちに強く言うことができない。当初、そんな幸一にいらついていた克彦だが、自分の息子・浩一と同じコウイチという名前で同じ25歳ということもあり、だんだんと親しみを抱くようになる。幸一と克彦は、親子のように心を通わせていくが…。
<解説>
役所広司演じる木こりの克彦さんは、毎日単調な日々を送っています。
妻を亡くし、息子の浩一(高良健吾)と二人暮らし。
毎日、食事を作って、洗濯をして、仕事に行って…と、男やもめの日々の繰り返し。
しかも、息子の浩一は言うことを聞かず、定職にも就かず、「俺は東京へ行く!」と勝手に家出してしまったり。
そんな中、村にやって来た映画の撮影隊に出会った克彦さん。
最初はうさんくさく思っていたものの、やがてそのお祭り騒ぎに巻き込まれていきます。
頼りない若手監督の田辺幸一と会っているうちに、だんだんと息子と話しているような気分になってきます。
実の息子の浩一には言えないようなアドバイスも、幸一には素直に言えたり…。
それは、幸一も同じです。
実の父には言えない思いも、克彦さんには言うことができます。
そして、克彦さんの言葉を、父からの言葉のように聞くのです。
そんな“疑似親子”は、映画製作のために協力し合います。
そして、克彦さんは自らの経験や人脈を活かして幸一を助け、幸一は自らの殻を破り、堂々と“映画監督”として現場を仕切れるようになるのでした。
お互いが成長した後の、克彦さんと幸一の疑似親子、そして克彦さんと浩一の実の親子の姿は、それぞれとてもいい雰囲気です。
何も口に出さずとも言いたいことはわかり合えていたり、知らず知らずのうちに同じ行動をしていたり。
特に、克彦さんと浩一の食事のシーンは、日常を共にしている家族だからこその同じ行動が、とても微笑ましく見えるのでした。
沖田修一監督のこの作品、第24回東京国際映画祭にて審査員特別賞を受賞し、さらに第8回ドバイ国際映画祭のアジアアフリカ部門にて最優秀男優賞(役所広司)、脚本賞(沖田修一、守屋文雄)、編集賞(佐藤崇)を受賞しています。
独特のコミカルな雰囲気で、映画製作ドラマとしても人間ドラマとしても楽しめるこの作品。
幅広い魅力を持った一作だと思います。
MYLOHASニュース:役所広司さん主演映画『キツツキと雨』 監督×高良健吾さん対談インタビュー:https://www.mylohas.net/2012/02/012197post_341.html
『キツツキと雨』(129分/日本/2011年)
公開:2012年2月11日
配給:角川映画
劇場:角川シネマ有楽町ほかにて
監督・脚本:沖田修一
主題歌:星野源
出演:役所広司/小栗旬/高良健吾/臼田あさ美/古館寛治/嶋田久作/平田満/伊武雅刀/山崎努/黒田大輔/森下能幸/高橋努
公式HP:http://kitsutsuki-rain.jp/
角川書店 (2012-07-19)
¥2,999
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 166518
ビクターエンタテインメント (2012-02-08)
売り上げランキング: 111591
売り上げランキング: 2411
売り上げランキング: 93641