メカニック ／ The Mechanic

いかにもジェイソン・ステイサムっぽい、というか、ジェイソン・ステイサムの、ジェイソン・ステイサムによる、ジェイソン・ステイサムのための映画というか、もう、ジェイソン・ステイサム以外に適役が見つからない、という感じの映画『メカニック』。

いやー、この人は、ホントにぶれませんね。もう、安心感がある。
この人が出演しているアクション映画は、なんだかそれだけで観たくなる気がします。

まあ、プロット聞いただけで、ストーリーがほぼ想像できちゃうような映画が多いですが、ストーリーが単純な分、スタイリッシュかつバカバカしいほど大げさなアクションで楽しませてくれると言うか。
ちゃーんと、スタイルが確立している気がします。

色気もありつつストイックさを感じさせる、決してハンサムではないんだけど男前な雰囲気のあるジェイソン・ステイサム。
世代としてはブラッド・ピット（1963年生まれ）、ジョニー・デップ（1963年生まれ）世代の少し下、レオナルド・ディカプリオ（1974年生まれ）とかマット・デイモン（1970年生まれ）と同じくらいの世代（1972年生まれ）になるのでしょうが、なんだか他の俳優とは一線を画す感じの独自のスタイルを持った俳優さんになりました。
しかも、あーんなストイックな雰囲気を醸し出しつつも、15歳近く年下のセクシーボム、ロージー・ハンティントン＝ホワイトレイ（1987年生まれ）ちゃんと付き合っているっていうあたりも、なんかイメージぴったりでいい感じです。。。

この作品は、1972年にチャールズ・ブロンソン主演で製作された同名作品のリメイクになります。

私は前作は未見なのですが、前作はアメリカン・ニュー・シネマの流れを汲んだ、悲劇的な結末の作品だそう。
実は、この72年版のプロデューサー、アーウィン・ウィンクラーとロバート・チャートフの息子たち、デヴィッド・ウィンクラー、ビル・チャートフが2010年版の『メカニック』の製作を務めています。
アーウィン・ウィンクラーとロバート・チャートフは、息子たちに招かれて、2010年版でも製作総指揮として参加しているそうで、親子二代にわたり、この作品に関わっているのです。

“メカニック”と呼ばれる暗殺者が、ある親子に関わっていくというこの作品のストーリーにぴったりの逸話と言えるかもしれません。

この作品でジェイソン・ステイサムが演じているのは、とにかく“プロフェッショナル”に徹し、私情をはさまずに仕事を完遂させる暗殺者・アーサーです。
かつての恩人で親友だったにもかかわらず、自分の手で殺した男・ハリーの息子のスティーブを、自らの手で暗殺術を仕込むことになったアーサー。
彼は、下調べを入念に行った上で時間をかけて完成させる自らの暗殺術を、徹底的にスティーブに教え込みます。

アーサーとスティーブの間には、だんだんと兄弟のような、父子のような信頼関係が出来てきて、二人の生活にはしばしの安らぎが訪れるのでした。
しかし、やがて、アーサーがハリーを殺したことがスティーブに知れ、二人の間の歯車が徐々に狂っていくのです…。

このアーサーとスティーブの緊迫感のある関係は、なかなか見応えがあります。
スティーブにとって、アーサーは兄であり、父であり、師匠であり、親の敵でもあります。
アーサーにとって、スティーブは弟である、息子であり、弟子であり、自らが殺した男の息子でもあるのです。

殺しのプロフェッショナルが、そんな関係性の相手といかに付き合っていくものなのか。
アーサーが“メカニック”と呼ばれる理由は何なのか。
『メカニック』というタイトルが、観終わった後に心に残るこの映画。

“プロフェッショナル”の一つの在り方を教えてくれるような作品でした。