【映画レビュー】君に届け
別冊マーガレットを読まなくなってから、早十数年。
女子中高生の“きゅん…”というような気持など、味わわなくなって久しいですが、この映画『君に届け』を観て、久しぶりにきゅんきゅん来ました。
「今どきの女子高生でこんなウブな子がいるのか?」とびっくりしてしまうような純真な少女を多部未華子が演じ、「こんなに爽やかな男子高校生がこの世にいるのか? きっと彼にはスネ毛とかも生えてないし、エロ本とかも読んだことがないに違いない!」と思えるような、王子様のような男の子を三浦春馬が演じている映画『君に届け』。
現在11巻まで発売されている椎名軽穂の同名大ヒットコミックを映画化した本作。
累計発行部数が1200万部を超え、少女まんがとしては異例のヒットを記録しているというのも納得の感動作でした。
時代が変わっても、“友情”や“初恋”に対して抱く想いは、普遍的なものなんですね…。
<STORY>
高校に入学以来、長い黒髪のせいで“貞子”と呼ばれ、友だちのできない少女・黒沼爽子。彼女は、自分にも分け隔てなく接してくれる爽やかな人気者・風早翔太に憧れていた。7月のある日、風早の幹事で肝試しが行なわれることに。吉田千鶴と矢野あかねが「貞子、幹事やんねーかな」と話しているのを聞き、「みんなの役に立ちたい」とお化け役に立候補する爽子。肝試しをきっかけに、爽子は矢野と吉田、そして風早と仲良くなるのだが…。
<解説>
実はこの作品、少女まんが原作ということで、あんまり期待せずに観に行ったのです。
「爽やかなクラスの人気者が、なぜか目立たないドジっ子を好きになって、そこから巻き起こるちょっとしたドラマを描いた映画なんでしょ」くらいのイメージで。
でも、その期待をいい意味で裏切られました。
なんというか、奇をてらうわけではなく、ものすごく誠実に高校生たちの感情を描いている作品でした。
「爽やかからできているのではないか」と思えるほどの爽やか少年・風早が、“貞子”と呼ばれるような少女・爽子になぜ恋をするのか。
派手目な外見の今どきの女子高生・吉田と矢野がなぜ爽子と友だちになろうと思ったのか。
そういう部分にも、ちゃんと納得できる理由があり、ご都合主義なストーリー展開でもありません。
初めてできた友だちを大切に思う感情。
“好き”という感情がよくわからず戸惑う気持ち。
特に何をするわけでもなく特別な人をそっと見守ろうとする姿勢。
自分の気持ちをひたむきに届けようとするまなざし。
そういう、友情とか初恋とか、ストレートに口にするのが恥ずかしいような、でもやっぱり、人間にとって大切で普遍的なテーマを、誠実に、丁寧に描いている点に、感動してしまったのだと思います。
しかし、熊澤尚人監督はなぜこんなに高校生たちの日常を美しく切り取ることができるでしょうか…。
教室の窓から差し込む日差しとか、校庭の花壇の土の匂いとか、体育館の涼しさとか、そこで体験した様々な感情とか、そう言ったものをいろいろと思い出させてくれました。
こういう学生生活の中にあふれていたキラキラ感って、大人になって得ようとしても得られないもの。
なんだか、すごーく純粋な気持ちになれました。
今、プレスを読み返しているだけでも、ちょっと胸が熱くなるほど。どうしたんだ、私。
少女まんが原作ということで敬遠せずに、ぜひ高校卒業から長い年月が経っている人にこそ、観て欲しい作品だと思いました。
最後にイケメン情報を。
爽子の恋の相手・風早翔太を演じる三浦春馬くんがカッコいいのは周知の事実だと思いますので、あえてここでは触れません。
私のオススメは、風早の親友・真田を演じている青山ハルくん。
野球部員という設定で、よく日焼けした肌にがっしりボディ、短髪がよく似合う青山くん。
寡黙な日本男児って感じで、かなり素敵です。
短髪が似合う男性が、やっぱり本物の男前だと思うんですよね…。アシンメトリー・ヘアのなんちゃってイケメンが多い昨今、こういう美形短髪男子は貴重です。
オダギリジョーら癖のある名優が揃った鈍牛倶楽部に所属ということで、きっとこれから演技も上達するでしょう。
これからの成長を期待したい、注目の俳優です。
『君に届け』(128分/日本/2010年)
公開:2010年9月25日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:椎名軽穂
監督:熊澤尚人
出演:多部未華子/三浦春馬/蓮佛美沙子/桐谷美玲/夏菜/青山ハル/ARATA/金井勇太/勝村政信/富田靖子
公式HP:http://www.kiminitodoke-movie.com/
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