【映画レビュー】ヒューゴの不思議な発明 / Hugo
映画監督マーティン・スコセッシの“映画愛”にあふれた映画『ヒューゴの不思議な発明』。
ファンタジックな3D映像で子ども向けの作品なのかと思いきや、子どもたちの冒険を通して、一度夢を諦めた老人が再び夢を取り戻すまでを描く、素敵な物語です。
映画人にとっての映画を作る一番大きな原動力は、“映画を観てくれる人を驚かせ、楽しませたい”ということなのだということがよくわかるこの作品。
3D映像で1930年代のモンパルナス駅を再現し、ゼンマイだらけの時計台の中や、複雑な駅の中の秘密通路の様子をファンタジックに映し出したのも、スコセッシ監督のそんな気持ちの表れでしょう。
映画監督の映画愛も伝わってくるけれど、それと同じくらい“映画監督”という人種の子どもっぽさやナイーブさも感じられ、なんだか微笑ましくもありました。
<STORY>
パリのモンパルナス駅に隠れて一人で暮らしている少年・ヒューゴ。彼はパパの遺した機械人形を修理しようと研究していた。ある日、ネジの調達のためおもちゃを盗もうとしたところ、玩具店のパパ・ジョルジュに捕まった。パパ・ジョルジュはヒューゴの持っていた手帳を取り上げてしまう。パパの形見でもあり、機械人形の修理法などが書かれたその手帳を取り返そうと、ヒューゴはパパ・ジョルジュの養女・イザベルに協力を依頼する…。
<解説>
この物語は1930年代のパリを舞台にしています。
父親を亡くし、モンパルナス駅の時計修理工をしている叔父に引き取られた少年・ヒューゴは、いつのまにか姿を消した叔父に代わり、モンパルナス駅の時計のネジ巻きをしながら、こっそりと駅の時計台で暮らしているのです。
そんな彼の願いは、父が博物館から拾ってきた機械人形を修理し、機械人形の書くメッセージを知ること。
そのために部品となるネジを集め、父親が遺した手帳を常に眺めて修理方法を考えているのです。
しかし、その大切な手帳を玩具店店主のパパ・ジョルジュに奪われてしまい、ヒューゴはその手帳を必死で取り返そうとするのです。
パパ・ジョルジュはその手帳を見るなり顔色を変え「亡霊だ…」とつぶやいたのです。
そして、彼の養女・イザベルは、なぜか機械人形を動かすために必要な最後の部品・ハート形の鍵を持っていました。
なぜパパ・ジョルジュはその人形を毛嫌いするのか?
なぜイザベルは鍵を持っているのか?
機械人形が書いたメッセージは、何を意味しているのか?
ヒューゴとイザベルは、パパ・ジョルジュたちに反対されながらも、その謎を解き明かそうとします。
そして、その謎がわかった時、観客たちの前に素晴らしい“映画製作者たちが抱いている映画愛”が披露されるのです。。。
この作品の中で、観客はいくつかのの古きよき映画を観ることができます。
ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』に、リュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車到着』、ハロルド・ロイドの『ロイドの要心無用』など…。
よほどのシネフィルではない限り、なかなか観ることのできないこれらの映像を大スクリーンで観ることができるなんて、これはとても素敵なことだと思います。
エイサ・バターフィールドとクロエ・グレース・モレッツ演じる無邪気な少年少女たちのまっすぐな想いが、人生の挫折を経験し諦念を抱えて生きる大人たちを変えていくそのストーリーラインも、王道ながらも素晴らしいものだと思います。
冒頭の流れるようなモンパルナス駅の3D映像や、月光にきらめくゼンマイだらけの時計台、駅構内のカフェや花屋で展開するラブストーリーなど、映像的にも見応えあり。
“映画愛”に満ちた作品ではありますが、それほど“映画”に興味のない人でも、映像的に楽しめるのではないでしょうか。
別コラム:オトコに見せたいこの映画『ヒューゴの不思議な発明』
『ヒューゴの不思議な発明』(126分/アメリカ/2011年)
原題:Hugo
公開:2012年3月9日
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
劇場:全国にて
原作:ブライアン・セルズニック
監督:マーティン・スコセッシ
製作:ジョニー・デップ
出演:エイサ・バターフィールド/クロエ・グレース・モレッツ/ジュード・ロウ/ベン・キングズレー/サシャ・バロン・コーエン/レイ・ウィンストン/クリストファー・リー/ヘレン・マックロリー/リチャード・グリフィス/フランシス・デ・ラ・トゥーア/エミリー・モーティマー/マイケル・スタールバーグ/エミル・ラジェ/エドマンド・キングズリー
公式HP:http://www.hugo-movie.jp/
アスペクト
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