【映画レビュー】グッド・タイム ／ Good Time

映画『神様なんかくそくらえ』にて2014年の東京国際映画祭でグランプリと監督賞をダブル受賞したジョシュア＆ベニー・サフディ兄弟。
アメリカのリアリティ番組「全米警察24時 コップス」に出てくるような低レベルの犯罪者をイメージしてこの作品を作ったそう。
もともとロバート・パティンソン自身が「どんな作品でもいい、あなたたちの次の映画に関わりたい」とサフディ兄弟との仕事を熱望したそうで、それでこの映画が実現したということ。

ロバート演じるコニーはどうしようもない、先の見通しもない、なんのプランもない犯罪者です。
そんな彼が反射神経と人好きのする容姿と口のうまさ、そしてそのセンスで幾度も襲い来る危機を乗り越え、新たな犯罪を（意図しない場合もありながら）起こしながら走っていくのです。

そこに見えるのは、彼らの抱える絶望感と根拠のない自信、どこかで一攫千金して人生を一発逆転させようという高揚感、その場しのぎの瞬発力。
そこから感じられる、より良い生への欲望や強い生命力が、明らかなダメ人間であるコニーになんともいえない吸引力を与え、観客の目を引きつけて目を離せなくさせてしまうのです。

実はこの作品では、白昼のニューヨークで無許可でゲリラ撮影を行っているそう。
そこからはサフディ兄弟の怖いもの知らずな無鉄砲さや、強い自信を感じさせます。

ある意味、サフディ兄弟はコニーの裏返しと言えるのかもしれません。
クイーンズ出身のサフディ兄弟、彼らには“映画”という突破口があり、その自信に見合うだけの才能があったから、突出することができた…。
どうしようもないコニーが愛すべき存在として描かれているのには、そういうサフディ兄弟の一種の同胞愛が隠れているのかもしれません。

そして、もう一点。
この映画について語るには、音楽について触れないわけにはいきません。
第70回カンヌ国際映画祭サウンドトラック賞を受賞したワンオートリックス・ポイント・ネヴァーによるサントラは、重低音が印象的で疾走感とともに不穏な雰囲気を感じさせるもの。
イギー・ポップが歌詞を書いたエンディングの曲「The Pure and the Damned」も罪深い兄のコニーと純粋な弟のニックの関係性を示唆し、彼らの間にある単純な兄弟愛と複雑な関係性を感じさせる、素晴らしい曲に仕上がっています。