エクレール・お菓子放浪記

『エクレール・お菓子放浪記』という題名から、なんだかスイーツな映画なのかと勝手に思っていた本作。

しかし、本作の中身はそんな甘っちょろいものではなく、戦中・戦後の混乱期をたくましく生き抜く、孤児の物語でした。

主人公の孤児・アキオを演じる吉井一肇くんのボーイ・ソプラノの歌声に、思わず涙…。
歌声だけで泣かせるって、ずるいよなぁ。。。
でも、彼の歌声はそのくらいきれいなのです。

実はこの作品、宮城県の市民・行政・企業の協力のもと、宮城発の映画として「シネマとうほく」によって製作された作品です。
石巻市を中心に、登米市、大崎市、富谷町、村田町と、宮城県内3市2町で撮影され、宮城県民の皆さんが炊き出し・エキストラなどにも協力してくださっていたのだそうです。

しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、石巻市は大きな被害を受けました。
この映画のロケにも使用され、先行ロードショーの会場となる予定だった岡田劇場なども、跡形もなく流されてしまったそうです。

現在、宮城、福島、岩手での公開の目処は立っていないそうなのですが、“戦争の傷に負けずに立ち向かう”少年の姿を描いたこの作品、そして故郷のかつての姿が映っているこの作品を、宮城や福島の皆さんが観ることができればいいのですが…。

<STORY>
昭和18年、孤児院から脱走したアキオは感化院に入れられた。厳しい体罰のある感化院だったが、院長秘書の陽子先生は、アキオに優しく接し、「お菓子と娘」という歌を教えてくれた。その後、陽子先生は母親の看病のために実家に帰ることとなり、アキオもフサノばあさんの家に引き取られた。しかし、フサノばあさんと喧嘩して、アキオは家を飛び出し、旅役者の一座と行動を共にすることに。時は昭和20年、戦争も終わりに近づいていた…。

<Cheeseの解説>
この物語の舞台となっているのは、第二次世界大戦戦時下から戦後すぐの日本。
戦争のどさくさで、浮浪児が街に住み着いていたり、人身売買まがいのことが行われていたり、現在の日本とは全く違う世界です。

この中で、一人、雄々しく生きて行くアキオくんが、本当にいい子なのです。
礼儀正しく、明るく、さわやか。
こんな悲惨な環境で、こんないい子に育つ訳がないと思うのですが、まあ、そこはね…。

映画の中でアキオくんは、人の世の世知辛さを知り、諸行無常を知ります。
そして敗戦を迎え、自暴自棄になるのです。

でも、彼は陽子先生の優しさと、彼女の言葉だけを大事に思い、辛い日々を生き抜くのでした。。。

この映画を、エンターテインメント作品としてみると、実際ちょっと微妙です。
しかし、こういう時代があったこと、私たちの先祖はこういう時代を生き抜いて日本を復興させてきたこと、その事実を、現在の私たちに思い出させてくれるという意味では、大きな意味を持った映画なのかもしれません。

この映画のロケ現場となった宮城県や福島県の方達に、早くこの映画が届いて欲しいと思います。
あ、あと、優しい気持ちにさせてくれる、甘くて美味しいものも。

『エクレール・お菓子放浪記』(105分/日本/2011年)
公開:2011年5月21日
配給:マジックアワー+『エクレール・お菓子放浪記』全国配給委員会
劇場:テアトル新宿ほか全国にて順次公開
原作:西村滋
監督:近藤明男
出演:吉井一肇/早織遠藤憲一高橋惠子太賀根岸泰樹いしだあゆみ松村良太山田吾一駒田徳広新崎人生ニコラス・ペタス竹内都子尾藤イサオ林隆三
公式HP:http://www.eclair-okashi.com/

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