マイク・ミルズのうつの話 / Does Your Soul Have A Cold?

日本人の友人がうつ病の薬を飲んでいるのを見て、“日本のうつ病事情”に興味を持った映画監督、マイク・ミルズ。

彼がオーディションで選んだ5人の日本人にインタビューを重ねて、彼らの生活ぶりを映し出したドキュメンタリー映画が、本作『マイク・ミルズのうつの話』です。

ドキュメンタリー映画というと、どうしても監督の主張のプロパガンダになりがちですが、この作品はそういった形ではなく、ただ淡々と5人のうつ病患者たちのインタビューを映し出していきます。
「本当に、マイク・ミルズはなぜこの映画を撮ろうと思ったのだろう…」と、なぜか不思議に思ってしまいましたが…。

<STORY>
「毎日嫌いな酢を飲んで精神を鍛えている」というミカ。絵などの創作活動に力を入れ、毎日日記をつけているタケトシ。緊縛されることに悦びを感じ、ハイヒールとホットパンツがユニフォームのケン。自殺願望があり、毎日泣いて過ごしているというカヨコ。サボテンの飼育や写真撮影を趣味に持つSEのダイスケ。彼らは、日本で暮らしているうつ病患者だ。マイク・ミルズ監督は彼らの生活に寄り添い、彼らにインタビューを重ねていく。

<Cheeseの解説>
1999年、製薬会社による“うつはこころの風邪”というキャッチコピーで、うつ病が身近な病気であるということを広めるキャンペーンが行われました。
その頃から「うつ病は誰もがなる病気だ」という考えが広まり、世間的な偏見も少なくなってきたといいます。

とは言え、どんなに認知が広まっても、うつ病患者が毎日苦しみを抱えながら生きているという点は変わりません。
このドキュメンタリーに登場する5人は、その苦しみを抱えつつ、薬を飲んだり自分なりに自分を癒す方法を見つけて、日々を送っています。

うつ病の認知は、製薬会社のマーケティングにより広まったそう。
その認知の広がりにより、偏見が少なくなったことも事実。
しかし、その認知の広がりが、うつ病患者を多く作り出したであろうことをマイク・ミルズは匂わせています。

ずっと中立的な立場でうつ病患者のインタビューを映し出すこの映画、監督の主張を声高に叫ぶ、刺激の強い昨今のドキュメンタリー映画に慣れた身には、ちょっと物足りなく映る点も。
個人的には、マイク・ミルズとうつ病の関わりや、彼のうつ病に対する思いなど、監督の声をもっと聞きたかったと思います。
日本のうつ病患者だけではなく、アメリカのうつ病患者の声があっても良かったのではないかと。。。

実は、他に見どころがひとつ。
マイク・ミルズはもともと、グラフィック・アーティストやミュージック・ビデオの監督としても知られた存在。
このドキュメンタリーの中には、彼が日本で見かけて面白いと思った風景などが数多く映し出されています。

見慣れた渋谷や新宿の街並、駅の中の様子なども、彼の目を通すとどこか不思議でポップに見えてくるから不思議です。
この映画『マイク・ミルズのうつの話』は、日本人患者のうつ病に対する思いを聞きながら、外国人の目線で日本を見ることができる、日本人にとってはちょっと不思議な感覚を味わえる映画でもあります。

『マイク・ミルズのうつの話』(84分/アメリカ/2007年)
原題:Does Your Soul Have A Cold?
公開:2013年10月19日
配給:アップリンク
劇場:アップリンク Xにて
監督:マイク・ミルズ
出演:タケトシ/ミカ/ケン/カヨコ/ダイスケ
公式HP:http://uplink.co.jp/kokokaze/

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