【映画レビュー】ジャンゴ 繋がれざる者 / Django Unchained
最強の映画オタクとして、様々な映画へのオマージュを散りばめながら、『キル・ビル』、『イングロリアス・バスターズ』など、女性の復讐劇を描き続けてきた映画監督クエンティン・タランティーノ。
彼の最新作となるのが、この映画『ジャンゴ 繋がれざる者』です。
正直、ここ最近のタランティーノ作品って才気走った感じやひけらかしの方が先に立って、映画作品としては今ひとつ面白くないと個人的には思っていたのですが、この作品は違います!
ここ数年の作品の中では、間違いなくナンバー1!
『続・荒野の用心棒』など、マカロニ・ウェスタンを下敷きにしている作品ですが、マカロニ・ウェスタンをあまり観たことがない人でも充分に楽しめる作品になっていると思います。
もちろん、マカロニ・ウェスタンに詳しい人だけが楽しめるコネタはいっぱい盛り込まれているので、“知っている人は二度おいしい”というような楽しみ方ができますよー!
(特にフランコ・ネロ&ジェイミー・フォックス、二人のジャンゴの共演シーンは、ファン垂涎のはず!!)
<STORY>
1958年、黒人奴隷のジャンゴは、テキサスの荒野で賞金稼ぎのドイツ人・キング・シュルツ医師と出会う。ジャンゴはシュルツの手伝いとして、以前働いていた農園の監督官をしていたブリトル三兄弟を見つけ出し、殺す。その腕を見込んだシュルツは、彼を相棒にすることに。やがてシュルツに心を許したジャンゴは、自分にはブルームヒルダという妻がいたが、奴隷同士の結婚は許されず、引き裂かれてしまった哀しい過去を話すのだった…。
<解説>
奴隷同士の結婚などが認められていなかったこの時代、黒人奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)はブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)という女性と恋に落ち、結婚。
しかし、その農園の監督官をしていたブリトル三兄弟に引き裂かれ、激しい鞭打ちの末、別々の農園に売られることになってしまったのです。
そして、ある農園に買われ、そこに連れて行かれる最中だったジャンゴは、実は賞金首だったブリトル三兄弟を追う賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)と出会い、彼がブリトル三兄弟を殺すのを手伝うことに。
そして、ブリトル三兄弟を追う旅の途中で、ジャンゴの賞金稼ぎとしての才能を見込んだシュルツに誘われ、彼の相棒になることになるのです。
そして、シュルツとジャンゴは、金と暇を持て余した若き暴君・カルビン(レオナルド・ディカプリオ)の支配するキャンディ・ランドという農園にブルームヒルダがいるということを突き止め、彼女を取り戻すことを計画するのですが…。
ジェイミー・フォックス演じる黒人奴隷・ジャンゴ。
彼は賞金稼ぎのシュルツ医師により、“ジャンゴ・フリーマン”になります。
そして、黒人が馬に乗ったり酒場に入ったりすることのなかったこの時代に、シュルツと共に堂々と社交場に出入りし、白人たちを威圧し、銃で皆殺しにしてしまったりするのです。
クリストフ・ヴァルツ演じるシュルツ医師も、変わった人物。
詳細は劇中では明らかにされませんが、元々はドイツ人でアメリカで歯科医をしていたものの、歯科医よりも賞金稼ぎを本業とし、賞金首を追っては“生死を問わず”捕まえ、金を稼いで生きているのです。
この『ジャンゴ 繋がれざる者』、形式はマカロニ・ウェスタンではありますが、黒人奴隷やドイツ人医師という、当時のアメリカ社会からははみ出した所で生きているキャラクターが主人公ということで、王道のマカロニ・ウェスタンとは一線を画す存在なのです。
そんな『ジャンゴ 繋がれざる者』の大きなテーマとなっているのは、“どんな妨害にも負けない強い愛”と、“人を差別する野蛮な社会に対する嫌悪感”、弱いものが自分たちを虐げてきた者に果たす“復讐”。
そういった意味では、『キル・ビル』で自分を裏切った男に対する切ない愛と復讐を、『イングロリアス・バスターズ』でユダヤ人を差別して虐殺したナチスへの復讐を描いたタランティーノ監督の真骨頂的な作品とも言えるでしょう。
無邪気に奴隷同士のバトルを楽しむシスコン坊ちゃん・カルビンを演じるレオナルド・ディカプリオや、英語、フランス語、ドイツ語を駆使する一癖あるインテリをイヤミな感じに好演するクリストフ・ヴァルツ、顔のかたちまで変えて嫌われ役の黒人奴隷・スティーブンを演じるサミュエル・L・ジャクソンなど、俳優陣の演技も見応えたっぷり。
みんなが素晴らしい演技をノリノリで楽しんでいます。
137回も「ニガー」という単語が登場したり(なんと1.2分に1回の割合)、黒人奴隷が無知蒙昧なキャラクターに描かれているところもあったり、いろいろと論議を呼んでいる作品ではありますが、リンカーンの奴隷解放宣言から150年目というこの2013年に、スティーブン・スピルバーグ監督の『リンカーン』と共に、観ておきたい作品の一つだと思います。
別コラム:オトコに見せたいこの映画『ジャンゴ 繋がれざる者』
『ジャンゴ 繋がれざる者』(165分/アメリカ/2012年)
原題:Django Unchained
公開:2013年3月1日
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ/ジェイミー・フォックス/クリストフ・ヴァルツ/ケリー・ワシントン/サミュエル・L・ジャクソン/ウォルトン・ゴギンズ/ドン・ジョンソン/ローラ・カユーテ/デニス・クリストファー/ジェームズ・ルッソ/ジェームズ・レマー/トム・ウォパット/ブルース・ダーン/フランコ・ネロ/ロバート・キャラダイン
公式HP:http://www.sonypictures.jp/movies/djangounchained/
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