【映画レビュー】ダラス・バイヤーズクラブ ／ Dallas Buyers Club

1980年代、俳優のロック・ハドソンがエイズで死亡し、エイズは同性愛者が罹る病気という偏見で見られていた時代。

エイズ患者への偏見に立ち向かい、エイズ患者たちにアメリカでは手に入らない治療薬を配る会員制のクラブ“ダラス・バイヤーズクラブ”を立ち上げたビジネスマンがいました。
その名も、ロン・ウッドルーフ。

1986年に余命30日を宣告されつつも、1992年まで生き延びたロン・ウッドルーフの姿を描いたのが、この映画『ダラス・バイヤーズクラブ』です。
怪優マシュー・マコノヒーが、21キロの減量を果たし、主人公のロン・ウッドルーフを演じています。

この映画の見どころは、やはり主人公のロン・ウッドルーフを演じるマシュー・マコノヒーと、彼のパートナーであるレイヨンを演じるジャレッド・レトのなりきりぶりでしょう。

21キロ痩せて撮影に臨んだマシュー・マコノヒーは、いつもの彼独特の洒脱なアクもすっかり抜け、いかにもダラスの荒くれ男になりきっています。
そして、約14キロ痩せて撮影に臨んだというジャレッド・レトは、繊細な心を持つトランスジェンダー・レイヨンを女装姿で見事に体現。女の私から見ても、そのか弱さや可愛らしさは守ってあげたくなりました。

彼ら二人は、まさにオスカー受賞にふさわしい演技と言えるでしょう。
果たして結果はどうなるか…。

彼ら二人が生き延びるために設立したダラス・バイヤーズクラブは、月400ドルの会費を払うことで、ロンがメキシコや日本など、世界中から集めたエイズ治療薬（米国では未承認のもの）を自由にもらうことができるというクラブ。
会員であるエイズ患者たちは、自己責任の上でエイズに効く薬を手に入れることができ、ロンやレイヨンは薬と金を手に入れることができる。
まさに、彼らにとってはWin-Winな組織を、作り上げたわけです。

彼らは、HIV感染という悲劇を、ただ受入れて悲しむようなことはしませんでした。
HIVという病気について勉強し、生き延びるために本来アメリカでは手に入らないはずの薬を手に入れ、さらにはそれをビジネスにする手だてを講じるロンの姿は、まさにタフでしたたかなサバイバー。
ロンの姿に勇気をもらう人もいるのではないでしょうか。

したたかに生き抜く人間の姿を描き、アメリカの薬物承認に関する問題を提起するこの作品、やはり2014年に、リアルタイムで観るべき映画のひとつだと思います。

※2013年の第86回アカデミー賞においてマシュー・マコノヒーがこの作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。