【映画レビュー】バケモノの子

2006年の『時をかける少女』、2009年の『サマーウォーズ』、そして2011年の映画『おおかみこどもの雨と雪』を経て、いつの間にか日本のアニメ映画の次世代を担う大物監督となった感のある細田守監督。

この細田監督が原作・監督・脚本を手がけたオリジナル作品が、この『バケモノの子』
人間界のすぐ近くにあるバケモノ界で、バケモノと一緒に暮らしてきた少年の成長を描いた、ケモナー必見映画です。

冒頭の炎のシルエットの映像や、渋谷での巨大クジラとの決戦など、映像的に見所も多数。
また、バケモノたちを演じる役所広司大泉洋リリー・フランキーらの声の演技も素晴らしい。
キャラクターにぴったりで、当て書きしたとしか思えないような個性を発揮しています。

<STORY>
母親を亡くしひとりぼっちになった9歳の少年・レンは、渋谷でバケモノの熊徹と遭遇。そのまま彼についていき、バケモノたちの住む世界“渋天街”で熊徹の弟子になり、九太と名付けられる。熊徹と彼の友人、百秋坊や多々良たちに見守られながら、九太は成長していく。やがて17歳に成長した九太は、ふと人間界に紛れ込む。そして楓という少女に出会った九太は、バケモノ界と人間界を往復しながら、楓に勉強を教えてもらうようになる。

<解説>
渋谷の雑踏を入ったところにある、不思議な小路。
そこを曲がっていくと、いつの間にかバケモノたちの暮らす“渋天街”にたどり着く…。

現実と幻のはざまにあるようなこの“渋天街”で、粗暴で不器用な熊顔のバケモノ・熊徹と、熊徹の弟子となった少年・九太を描いたこの物語。

悪いバケモノではないものの、他者との接し方が下手で、品格のかけらもない熊徹。
母親を亡くした後、誰も信じずに心を閉ざし、素直さのかけらもない小生意気な人間の小僧の九太。
彼らは何年も寝食を共にし、同じような動きを身につけることで、彼らは無意識のうちに理解し合うようになります。
彼らは、“バケモノ”と“人間”という種族を越えて、まるで親子のような絆を知らず知らずのうちに作り上げていくのです。

渋天街では、人間は「心に闇を抱えるもの」として、忌み嫌われていました。
しかし熊徹はそんなことを気にも留めず、九太という存在を受け入れたのです。

しかし、二人の絆が切っても切れないものになった頃、九太が“レン”という人間として生きる方法を知ってしまいます。
楓という少女と出会い、同年代の人間たちが経験している“勉強”の面白さを知り、人間としての“自我”のようなものも芽生え始めるのです。

その頃、熊鉄にも大きな試練が乗りかかっていました。
渋天街を率いるリーダー、宗師になるために、もう一人の宗師候補である猪王山(いおうざん)との決戦の日が近づいていたのです。

お互いにひとりぼっちだった熊徹と九太。
身勝手だった熊鉄は、九太と暮らすうちに、九太の父親のような存在に成長しました。
父親のように社会的な責任を身につけた熊鉄は、さらに大いなる責任のかかる、大いなる地位につけるのか?
そして、人間としての自我を芽生えさせた九太は、人間界、バケモノ界、どちらでの人生を選ぶのか?

そんな彼らの分岐点で、思わぬ“人間”が立ちふさがり、その闇を見せつけます。
同じ人間である九太は、そんな人間に立ち向かっていくのです…。

この映画、渋天街とともに、東京の渋谷が重要な舞台となっています。
常にお祭りのように人がたくさんいるけれど、みんなが他人に無関心な街、渋谷。
でも、そんな場所でも何者かは必死で生きていて、それぞれに想いを抱え、それぞれに成長している…。

実際にロケハンを行って絵を作ったということで、渋谷に行ったことのある人なら、ほとんどがモデルになっている場所がわかるはず。
この映画『バケモノの子』は、まさに、“私たちの隣にある、でも誰もが知らない場所”を舞台にしているです。
その場所に気づく人は、人より何かが敏感だったり、人より何かを抱えていたり、そんな人なのかもしれません。
だからこそ、誰にでも噛みつきまくっていた九太は、渋天街への入り口に気づくことができたのでしょう。

『バケモノの子』(119分/日本/2015年)
公開:2015年07月11日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作・監督・脚本:細田守
衣装:伊賀大介
音楽:高木正勝
声の出演:役所広司宮崎あおい染谷将太広瀬すず山路和弘宮野真守山口勝平長塚圭史麻生久美子黒木華諸星すみれ大野百花津川雅彦大泉洋リリー・フランキー
Official Website:http://www.bakemono-no-ko.jp/

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