【映画レビュー】ブラックパンサー ／ Black Panther

父親を亡くしたティ・チャラは、ワカンダ国王、そしてブラックパンサーとなる。ヴィヴラニウムという世界を崩壊させるほどのパワーを持つ鉱石が採掘されるワカンダでは、世界にも類を見ないほどのテクノロジーが発達していた。ある日、ワカンダに父王の弟の息子だというエリック・キルモンガーが現れる。ティ・チャラに挑戦したキルモンガーはティ・チャラを倒し、ワカンダ国王となることに。ティ・チャラは妹・シュリらとともにワカンダから追われるが…。

チャドウィック・ボーズマンがブラックパンサーを演じ、『クリード　チャンプを継ぐ男』のライアン・クーグラーが監督を務めた本作。

ブラックパンサーはもちろんカッコいいわけですが、実はブラックパンサーになるティ・チャラ自身は大したことありません。
一見強そうに見えますが、実は一人では何にもできないヘタレに描かれているのです。
彼を強くしているのは、代々伝わる秘密のハーブ、天才すぎる妹のシュリちゃんが開発したブラックパンサースーツとワカンダの超絶テクノロジー。
そして、ティ・チャラとワカンダを深く愛する賢く美しい女スパイで恋人のナキア、強すぎる女性兵士のオコエ。
シュリ、ナキア、オコエというたくましく美しい女性たちに囲まれて、なんとかその威厳をキープしているのです。

そんなブラックパンサーの敵となるのは、初めて会う従兄弟のエリック・キルモンガー。
エリックはかつてアメリカにスパイとして潜入したものの、先鋭化しすぎてしまったかつての王の弟・ウンジョブの息子。
幼くして父を亡くし、ロサンゼルスのストリートで揉まれながで一人育ったエリックは、CIAの特殊工作員など、凄まじい経歴を持つ男。
つまり、ワカンダ王家の血を引くうえに、戦闘能力なども兼ね備えた、超ハイスペックな男なのです。

そんなキルモンガーに挑まれ、無様に負けてしまったティ・チャラは、王座を追われてしまいます。
そして失意の中、自分は何をすべきか、ワカンダをどうしていくべきか、密かに策を練るのです…。

自分をとりまく小さな地域の中ではるか昔から続いてきた地位と守るべき責任と義務。
そして大きく広がった外の世界で果たすべき責任と義務。

祖先から、良い点、悪い点の両面を持つ“ワカンダ”という国、そして“ブラックパンサー”の地位を受け継いだテイチャラは、自分と対極にある外の世界の裏と表を知るキルモンガーと出会い、古くからの伝承を超えた、今、自らが果たすべき責務について自覚し、変革を決意していくのでした。

この『ブラックパンサー』、2018年の現在の社会情勢を見事に反映し、エンターテインメントに昇華した映画です。
黒人ヒーロー、女性たちの地位向上と彼女たちが実力を発揮できる環境が整備されてきていること、ある集団内にある先鋭化した民と保守派の民との内部争い…。
このニューヒーローの登場で、マーベル・シネマティック・ユニバースはより進化したと言えるでしょう。