【映画レビュー】ビッグゲーム 大統領と少年ハンター / Big Game
『エンド・オブ・ホワイトハウス』ではあのアーロン・エッカートが演じ、『ラブ・アクチュアリー』ではビリー・ボブ・ソーントンが演じたアメリカ大統領。
「こんな二人がアメリカ大統領だなんて、アメリカもどうなることやら…。でもさすがに、アメリカ大統領がこれ以上似合わない俳優がキャスティングされることはそうそうないだろうなー」と思っていたら、︎このフィンランド人監督ヤルマリ・ヘランダーによる映画『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』、本当に驚きのキャスティングを見せてくれました。
なんと言っても、この映画でアメリカ大統領を演じているのは、あのサミュエル・L. ジャクソン。
シールド長官ならまだしも、世界の命運をサミュエル・L. ジャクソンが握るとは…。かなり恐ろしい世界です。
でも、サミュエル・L. ジャクソン演じるこの大統領、イメージ通りにダメダメ大統領なのですが、でもそこがいい。
ズボンのチャック部分をオシッコで汚したまま、自信たっぷりに一般教書演説をかましちゃうような大統領のおかげで、フィンランドの一人の少年が、一人のハンターへ、そして一人の英雄へと、立派な成長を遂げたのです。
STORY
フィンランドのヘルシンキに向かうエアフォース・ワンが、何者かに追撃された。ムーア大統領は緊急脱出ポッドで脱出し、フィンランドの山岳地帯に落下する。そんなムーア大統領の乗ったポッドを見つけたのは、一人前のハンターになるために森で一昼夜を過ごそうとしていた13歳の少年・オスカリだった。ムーア大統領を追ってきたテロリストに遭遇したオスカリは、大統領を守ろうと、弓を手に勇気を出してテロリストに立ち向かうのだが…。
解説
『レア・エクスポーツ~囚われのサンタクロース~』で奇妙なサンタクロースの物語を届けてくれたヤルマリ・ヘランダー監督と、彼の甥にあたる子役のオンニ・トンミラ。
この二人がコンビを組んで、ハリウッドからサミュエル・L. ジャクソンやレイ・スティーヴンソンと言った俳優たちをフィンランドの山奥に呼び寄せて、型破りなエンターテインメント映画を作ってくれました。
この映画でサミュエル・L. ジャクソンが演じているのは、アメリカ大統領。
国民から馬鹿にされ、支持率も下降の一途をたどり、政権内部からも辞めてほしいと思われているようなウィリアム・ムーア大統領を演じています。
そんなダメダメ大統領な彼、エアフォース・ワンでの移動中に狙われ、脱出ポッドでフィンランドの森の奥にたった一人で放り出されてしまいます。
そのダメダメ大統領の前に現れるのは、フィンランド人の少年のオスカリ。
オスカリは、13歳の誕生日の一昼夜を一人で森の中で過ごし、ハンターとして獲物を狩る少年の通過儀礼の真っ最中。
オスカリのパパは、その儀式で熊を倒したという地元のヒーローながら、オスカリは偉大な父に萎縮して、弓さえもうまく射れないダメダメ少年。
自分に自信が持てないまま、通過儀礼に挑んだのです。
出会った最初から、虚勢を張って大統領と対等に話し、強がってみせるオスカリに、大統領は“強く見せる”ことの重要さを教えます。
一緒にソーセージを食べたりして、二人はだんだんと打ち解け、いいバディに。
そして、一晩が明け、大統領を狙う敵が二人の前に現れてしまいます。
オスカリは、最初は尻込みしてしまうものの、なぜ自分が大統領と会ったのかという理由に気付き、「今こそ自分が大統領を救わねば!」とテロリストに立ち向かいます。
そして、勇敢に冷蔵庫に乗って空を飛び、冷蔵庫に乗って急流をすべり、湖にもぐり、飛行機にしのびこみ、パラシュートに乗っての大冒険!
まあ、敵の悪者たちの頭が悪すぎて、いろいろと自滅しまくってくれているのも確かではあるのですが、オスカリは悪者と戦って大統領を守り抜くのです。
そして彼は、少年から男へ、そして英雄へと成長していきます。
地位が人を作ると言いますが、それと同じように、大統領というバディと、彼を守ろうという意志が、オスカリを英雄へと変えていくのです。
オスカリの冒険譚であり、成長譚であるこの物語。
異色のバディと、北欧の少年の面構え、そして北欧のハンターたちの厳しくもあたたかい無骨さに、思わず拍手を送りたくなる一作です。
まあ、悪者も上から下までダメダメだし、SPも側近もダメダメだし、大人が弱っちすぎるんじゃないかという意見もあるかもしれませんが。
思い出してください、大統領を演じているのはサミュエル・L. ジャクソンです。
彼が率いる国なんて、上も下も、敵も味方もダメダメに決まってます。
そう考えると、映画のストーリーにぴったりあった、とっても説得力のあるキャスティングですね。
まあ、なんだかんだ言っても、私はそんなサミュエル・L. ジャクソンが大好きです。
作品情報
『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』(91分/フィンランド=イギリス=ドイツ/2014年)
原題:Big Game
公開:2015年08月15日
配給:松竹メディア事業部
劇場:全国にて
監督・脚本:ヤルマリ・ヘランダー
音楽:ユリ・セッパ/ミスカ・セッパ
出演:サミュエル・L. ジャクソン/オンニ・トンミラ/レイ・スティーヴンソン/フェリシティ・ハフマン/ジム・ブロードベント/テッド・レヴィン/ヴィクター・ガーバー/マフメット・クルトゥルス
Official Website:http://biggame-movie.jp/
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