不惑のアダージョ
処女のまま更年期を迎えたシスターが、40歳になり“性”に目覚めていく…。
などと書くと、どうもロマンポルノとかそういった雰囲気を感じてしまうかもしれません。
でも、この映画『不惑のアダージョ』はそんなジメジメとしたエロティックな作品ではありません。
1974年生まれの女性監督・井上都紀が、素直な目で“女性の心と身体”を描いた作品と言えるでしょう。
初潮・妊娠・出産・閉経など、節目節目で身体に変化が起こり、そのバイオリズムに感情も左右されてしまいがちな女性には、きっと共感できる作品だと思います。
<STORY>
修道女の真梨子は、40歳にして更年期を迎えた。住まいと教会を往復するだけの彼女の日々には、なんの潤いもなかった。しかし、信者からバレエ教室のピアノ伴奏を頼まれて、バレエ教室に通うこととなった。肉体を厳しく律しつつも、音楽に身を任せ、感情を解放して見事なバレエを見せるバレエダンサーたちと接し、彼女は感情を解放する術を知っていく。ある日、彼女は神父に頼まれ、ある信者の息子の元に手紙を届けに行くのだが…。
<Cheeseの解説>
女性なら誰しもが、年をとるに従って「私はこのままでいいものか」と考えてしまうものだと思います。
精神はともかく、身体はやはり経年変化していき、出産などの可能性は狭まっていくからです。
特に大きな不満はないものの、ぼんやりとした不安はある…。
そんな不安を抱える女性には、主人公のシスターが更年期を迎え、戸惑う様子はよく理解できると思います。
この映画は、そんな主人公の心の変化を、音楽で描き出します。
自らを解放し自由に踊るバレエダンサーに触発され、無味な伴奏音を奏でていた彼女は、美しく官能的なメロディを奏でることができるようになるのです。
決して洗練されているわけではないのですが、歩き方、自転車の乗り方、楽器の演奏の仕方などで彼女の変化を表す井上都紀監督の演出は、力強さを強く感じさせます。
「太古、女性は太陽であった」というような、女性の持つ“生命力”を引き出しているような、そんな雰囲気。
テクニックに頼っていない分、観る人誰もが感じることができるような、そんなパワーを感じさせる作品です。
そういえば、この作品はキリスト教のシスターが主人公ですが、その設定は“男性との接触をしたことがない老嬢”という設定を裏付けるためといったように思えます。
せっかくシスターが主人公なのであれば、“「女性として男性と触れ合いたい」という本能”と、“「シスターとして清貧・貞潔・服従の生活を送らなければならない」という戒律”の間での葛藤というようなものがもっと描かれていれば、より深い作品になったような気もするのですが…。
紹介記事:このままでいいの? 内なる女性性を目覚めさせるシスターの姿を描く映画『不惑のアダージョ』
『不惑のアダージョ』(70分/日本/2009年)
英題:Autmun Adagio
公開:2011年11月26日
配給:ゴー・シネマ
劇場:ユーロスペースほか全国にて順次公開
監督・脚本・編集:井上都紀
出演:柴草玲/千葉ペイトン/渋谷拓生/橘るみ/西島千博
公式HP:http://www.autumnadagio.com/
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