【映画レビュー】青くて痛くて脆い
主人公のキャラクターが、もう本当に、青くて、痛くて、脆い。
タイトルがまさに主人公像を言い表している映画『青くて痛くて脆い』。
今をときめく吉沢亮と杉咲花という才能あふれる二人の若手俳優が主演をつとめるこの作品、観る人やどの登場人物に感情移入をするかで、だいぶ評価や感想が違ってきそうな物語です。
自分を現在の状況から救い出してくれる人を待ち望む心理というのは、以前は王子様を待つ女の子だけが口にできる特権だったのかもしれませんが、今は男の子であってもこういう心理を抱き、表に出すことは恥ずかしいことではないようですね。
ジェンダーに関係なく、自分らしくあることができる現代というのは、いい時代だとは思います。
<STORY>
大学生となった田端楓は、人との距離がうまくとれず、友だちを作らずにいった。そんな楓にグイグイ近づいてきた秋好寿乃は、二人で世界を変える秘密結社「モアイ」を作ろうと持ちかける。寿乃と楓の二人は「モアイ」として、フリースクールでのボランティアなどをしていた。しかし、寿乃は“この世界”から消えてしまう…。2年後、楓は友人の董介と共に、意識高めの就活サークルとなったモアイをかつての姿に戻そうと立ち上がる。
<解説>
同じく映画化された『君の膵臓をたべたい』の住野よるの小説が原作となっている本作。
そういえば、『君の膵臓をたべたい』も北村匠海演じるコミュニケーションの苦手な男の子が、浜辺美波演じる積極的な女の子に巻き込まれて、いろいろ経験して成長していく物語だったな、なんて思ってしまいました。
本作も言ってみれば同じ潮流というか、コミュ障の男の子が超積極的で空気を読まない女の子に巻き込まれ、自分を解放してしまったことから起こる物語です。
いわゆる“ライトノベル的”というか、「ある日青い髪の女の子が空から降ってきた!」「ある朝起きたら異世界にいた!」とでもいうような、自らの意思とは関係なく運命を変えられた男の子が主人公なのです。
『君の膵臓をたべたい』では、悲しい運命が主人公を“男”に成長させましたが、吉沢亮演じる本作の主人公は自己を開示しかけたにも関わらず途中でハシゴを外され(たと感じ)て、ねじ曲がっていってしまいます。
自分の思いを察してくれない彼女が悪い、彼女はそんな人間じゃなかったはずだ、彼女は変わってしまった、僕の知っている彼女はもういない……。
違和感を感じたなら、そこでその思いを口に出してすり合わせをする必要があるし、認識を更新したり変化させたりする必要があるのに、彼はそれをしません。自分は変わろうとせず、彼女が変化していくのをただ拒否し、自分の殻に閉じこもるだけ。
言ってみれば、自分勝手の極み。お子ちゃまと言えるでしょう。「気持ち悪い」と言われるのも当たり前。
杉咲花演じる寿乃は、何度も彼女の思いを言葉にして確認していたのにね……。
本作の主人公・楓のようなキャラクターは、一昔前には決して主人公になれなかったはず。
そんなキャラクターが主人公となる物語が多く誕生し、かつ同世代に支持される時代というのは、後ろ向きに感じますね。
もちろん、その時代時代に、若者から支持される芸術や文化、映画や小説があるのでしょう。
そんな新世代の作品に違和感を感じてしまうのは、自分がやはり旧世代だからなのでしょうね。。。
『青くて痛くて脆い』(118分/日本/2020年)
公開:2020年8月28日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:住野よる
監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
音楽:坂本秀一
主題歌:BLUE ENCOUNT「ユメミグサ」
出演:吉沢亮/杉咲花/岡山天音/松本穂香/清水尋也/森七菜/茅島みずき/光石研/柄本佑
Official Website:https://aokuteitakutemoroi-movie.jp/
KADOKAWA (2018-03-02T00:00:01Z)
¥1,540
東宝 (2018-01-17T00:00:01Z)
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アニプレックス (2019-04-03T00:00:01Z)
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双葉社 (2017-04-27T00:00:00.000Z)
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