【映画レビュー】愛を積むひと
常々、佐藤浩市の真っ黒すぎるあの髪の毛は不自然だと思っていた私。
本作、『愛を積むひと』での白髪の多いヘアスタイルを見て、「やっぱり自然なこの白髪の方が、断然素敵だわー」と思ってしまいました。
東京で工場を経営しながらアクセク働いていた夫婦が、北海道の美瑛に移住し、愛を積み、愛を見つけていく様を描いた映画『愛を積むひと』。
描きかたが綺麗すぎるきらいはありますが、人と人のつながりの素晴らしさ、形を変えて続いていく人間関係の機微を描いた、心が洗われるような美しい一作です。
<STORY>
東京の蒲田で工場を経営していた小林︎篤史と妻の良子は、工場をたたんで北海道の美瑛に引っ越してきた。良子は家の周りを石塀を囲もうと言い出し、篤史はアルバイトの徹と一緒に作業を始める。愛想のない徹だったが、小林家に空き巣が入り、遭遇した良子が骨折して以来、ガールフレンドの紗英を連れてきて、家事の手伝いをするように。︎篤史と良子は徹と紗英︎を、実の子どもたちのように可愛がっていたが、良子は突然倒れてしまう…。
<解説>
2002年にアメリカで出版されたエドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積むひと」を、舞台を日本に置き換えて映画化した本作『愛を積むひと』。
佐藤浩市と樋口可南子が長年苦労を共にし、老後を北海道で過ごす為に転居してきた夫婦を演じています。
妻・良子の希望で、夫・篤史は家のまわりに石を積んで、石塀を作り始めます。
そして、その石塀作りを手伝うために家にやってくるようになったのは、野村周平と杉咲花演じる若いカップル。
良子は、そんな二人を自分たちの子どものように可愛がります。やがて、篤史も彼らと打ち解けるようになるのでした。
しかし、良子は持病を悪化させ、帰らぬ人に…。
この映画『愛を積むひと』、全体に愛が溢れています。
自分の持病が悪化し、余命が長くないことに気づいていました。
見知らぬ土地で一人暮らしになるであろう篤史を思い、一人になっても熱中できるであろう“石塀作り”という仕事を遺し、篤史のそばにいてくれるだろう地元の仲間を作り、あちこちに篤史のために手紙を遺していくのです。
良子の心を知った篤史は、石塀を完成させ、良子が残してくれた美瑛の仲間たちとともに、美瑛での生活を作り上げていくのです。
そして頑なになっていた心をほどき、疎遠になっていた北川景子演じる娘・聡子にも本当の心を伝えることができるようになるのです…。
彼が美瑛で仲良くなった頑固オヤジ仲間、柄本明と酒を酌み交わすシーンは、とても印象的。
娘を愛しつつも、その愛をうまく表現できないオヤジたちの悲哀を、おかしみたっぷりに描いた素敵なシーンでした。
この映画『愛を積むひと』で監督・脚本を手がけたのは、松竹の社員監督、朝原雄三。
山田洋次監督の「学校」シリーズや『たそがれ清兵衛』で助監督を務めた監督を持つ朝原監督、どこか山田作品にも通じるような、誠実な映画作りを感じさせてくれます。
三國連太郎が出演していた「釣りバカ日誌」シリーズの監督を務めた経験もある朝原監督が、彼の息子である佐藤浩市に“頑固オヤジ”を演じさせているというのも、時の流れを感じますね。
<青山シアター>
「あなたのためなら何度でも…」秋の夜長に楽しみたい、強い愛が心を揺さぶるラブストーリー:http://magazine.aoyama-theater.jp/171003
『愛を積むひと』(125分/日本/2015年)
公開:2015年06月20日
配給:アスミック・エース、松竹
劇場:全国にて
原作:エドワード・ムーニー・Jr.
監督・脚本:朝原雄三
脚本:福田卓郎
音楽:岩代太郎
劇中歌:ナット・キング・コール
出演:佐藤浩市/樋口可南子/北川景子/野村周平/杉咲花/吉田羊/柄本明/佐戸井けん太/岡田義徳
Official Website:http://ai-tsumu.jp/
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