【映画レビュー】マジック・マイクXXL ／ Magic Mike XXL

男性ストリップ・ムービーと思わせながらも、実はスティーヴン・ソダーバーグならではの、実体のない経済への嫌悪感や厭世観に満ちていた前作の『マジック・マイク』。
この『マジック・マイク』から、そういった暗さや重さを取り去り、完全に“観客が前作に期待したストリップシーン”だけに振り切ってみせたのが、このシリーズの新作である映画『マジック・マイクXXL』です。

いやもう、むしろ気持ちいい。
私もあの場に行って、1ドル札バラまきたい！

そんな風に、「ナイスバディのイケメンに癒されたい」という女性の欲望に火をつける、パーティムービーです。

前作で監督を担当したスティーヴン・ソダーバーグ、今回は製作総指揮、撮影、編集を担当していますが…。
嫌いじゃないけど、自分の名前でリリースするにはちょっと抵抗があるということなのかしら？
それとも、ただ単に「もう映画監督からは引退宣言しちゃってるし、やっぱり監督はやらないで裏方に回ろう」というだけのことなんでしょうか。。。

ストリッパーを引退し、家具販売の仕事をしていたマイクの元に、かつての友人たちから連絡が入る。タンパ時代の仲間たちが、引退を前にストリッパー大会に出場するというのだ。マイクもケン、リッチー、ターザン、ティト、トバイアスらの仲間に加わり、キッチンカーに乗って旅に出る。彼らは、クラブでのドラァグクイーン・ナイトや、サバンナにあるドミナ、南部美女の暮らす豪邸などに立ち寄りつつ、ストリッパー大会の会場を目指す。

パーティーは終わるが、人生は続く。
そしてまた新しいパーティーが始まる…。

そんな、チャニング・テイタム演じるマイクの新たなるパーティーを描く本作。

前作『マジック・マイク』は、マイクがストリップの世界から足を洗うまでの物語と並行し、アレックス・ペティファー演じるザ・キッドという19歳の青年が、マイクというスター・ストリッパーや、マシュー・マコノヒー演じるダラスというストリップ・バーの経営者と出会い、成長していく物語を、二本柱で描いていました。

今作『マジック・マイクXXL』では、「ダラスはキッドを連れて新天地に行っちまったよ」というセリフひとつでキッドとダラスの存在はなかったことに。
マイクと、それ以外の男性ストリッパーたちが、ストリッパー大会に出るためのロードムービーとなっています。

前作では完全な脇役扱いだったケン役のマット・ボマー、ティト役のアダム・ロドリゲス、ビッグ・ディック・リッチー役のジョー・マンガニエロらが、今回では“旅の仲間”として大フィーチャーされ、マイクとは別の魅力を持った男性ストリッパーとして、女性たちの目を喜ばせています。

マイクは前作ではストリップと決別し、実業家となったわけですが、人生はなかなか人生設計通りには進みません。
運命の相手と思いプロポーズまでした彼女とも別れ、事業もなかなか軌道に乗らず、行き詰まりを感じていたマイクは、旧友たちの誘いに乗り、旅の仲間に入ります。
そして、各地を巡りながら出会った女性たちを解放し、幸せを与え、次の目的地を目指して移動していくのです。

このマイクの行動は、ある意味、逃げにも見えます。
でも、ちょっと一時立ち止まり、かつて成功していた職業でもう一度成功体験を手に入れることで、リフレッシュし、また厳しい人生に立ち向かうための英気を養っているのかもしれません。

つらいことを必死で我慢して、目標に向かってまっすぐ進むだけが人生じゃない。
たまには息抜きをして、自分を解放したっていい。
自分がストリップしたっていいし、行きたいと思うのなら女性が男性の裸を見に行って、自由に喜びを感じてもいい。。。

この映画『マジック・マイクXXL』、超ノー天気なパーティムービーに見えつつも、人が生きる上での大事なことを教えてくれているのかもしれません。
明日から地に足をつけて人生を歩むため、狂乱のパーティーに参加して、裸の男性へ向けて1ドル札をバラまきまくってもいいのだと…。