【本】殺人鬼フジコの衝動 / 真梨幸子
実は実録犯罪ルポとか、犯罪者の心理などを描いた物語などを見かけるとつい手に取ってしまう私。
真梨幸子さんの「殺人鬼フジコの衝動」は、幼少期から殺人に手を染め、15人以上を手に掛けた連続殺人鬼を描いた物語と言うことで、思わず手にとってしまいましたが、なんだかなぁ。。。
はしがき、本編、あとがき、あとがき後の新聞記事まで含めてひとつの物語が完成するという、メタ小説(というのかな?)なのですが、どうも企画倒れな気が。
ここまでいくと、やり過ぎです。
<STORY>
一家惨殺事件の生き残りである小学校5年生の少女・藤子。母の妹である叔母の家に引き取られ、同級生たちにの機嫌を取りながら生活している。ある日、カンニングしたのをクラスのコサカさんに見つかってしまう。その頃、クラスで飼っていたカナリアが死んでいるという事件が起こる。藤子は自分が殺したとコサカさんに思われたのではないかと逆上し、コサカさんを殺してしまう。それが、藤子が犯した連続殺人の始まりだった…。
<感想>
多分、この本の著者の方は、この結末を思いついた時、「やった! 私ってば天才!!」くらいに思っただろうと思うんです。
確かに、小説の形式としては斬新。
でもね…、いくらなんでもやり過ぎだと思うんです。
そこまでやってしまうと、リアリティも何もなくなるというか。
造りこんだ伏線があるわけではないので、突然出てきたその推理がものすごくご都合主義に思えます。
衝動殺人ならともかく、そこに保険まで絡んでくるとね…。
若い女性が自分の母の物語を小説化した物語ということで、どこか稚拙な文章も、物語の途中までは、その設定故に許せていたのです。
でも、最後の項目を付け加えたことで、物語の“虚構性”が一気に前面に出て来てしまいます。
そこで、“稚拙を演出した文章”だと思っていたものが、ただの“稚拙な文章”になってしまう。
なんだか、すごくもったいない感じ。
せっかくだったら、藤子の心理だけに焦点を置いて、殺人と言う大罪を平気で犯していくその心理構造と、そこに幼少期からの体験が与えた影響などを描いてくれていた方が面白かっただろうになあと思います。
それにしても、参考文献として巻末に掲載されていた「殺ったのはおまえだ」(編:「新潮45」編集部)、思わず家の本棚から引っ張り出して読んでしまいましたよ。
「もしかして、この小説は事実に基づいてる!?」なんて思っちゃってさ。
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