【映画レビュー】ボーはおそれている / Beau Is Afraid
常に恐怖に苛まれ、母を恐れるボー。
この映画『ボーはおそれている』は、そんなボーは死んだ母の葬儀のために実家に戻ろうとするボーの奇妙な冒険を描いたアリ・アスター監督作品です。
4つの章と2つのシーンからなるこの作品。
幼い頃から精神的に虐待されてきたボー・ワッセルマンの目に映る世界は、カフカのような、セルバンテスのような、なんとも奇妙でなんとも恐ろしさに満ちたものなのでした……。
STORY
ボーはいつも不安に苛まれていた。かかりつけの精神科医から母に会うために家に帰ることを勧められたボーは、翌日に母のモナに会いにいくことを決める。飛行機も予約済みだったが、おかしなアパートの隣人が眠りを妨げ、寝坊して飛行機に乗り遅れてしまう。母の怒りを恐れながら家に電話したボーは、モナが死亡したとの知らせを聞く。ボーは葬儀に出席するためにアパートを出るが、その道中にはとんでもない試練が待ち受けていた……。
解説
今もっとも話題作を多く提供している映画スタジオA24×『ミッドサマー』のアリ・アスター×『ジョーカー』のホアキン・フェニックスがタッグを組んだ、もっとも見逃せない映画である本作。
179分の間中、観客の頭の中は「これは何が起こっているの……?」とクエスチョンマークでいっぱいになってしまうような作品です。
ボーの目を通して描いた世界は、恐ろしいものです。
アパートや近所の路上には狂人がウヨウヨしていて、油断すれば水や火や騒音が襲いかかってき、車は猛スピードで走って人を跳ねます。
一見幸せそうな家庭でも、カメラが隠されていたり、娘は精神的にボロボロになっています。
森の中には不思議な旅芸人たちがいて、示唆に満ちたような、まるで自分のことのような舞台を演じていたりもし……。
そんな世界を通り抜けてたどり着いた実家には、さらに奇妙で恐ろしいラスボスが待ち構えているのです。
モナは、赤ん坊時代も、幼児時代も、そして大人になってからもボーは自分のものだと信じ、ボーを支配してきました。
その支配は、いつまでも続くのです。そう、ボーの人生は、まさにモナの手のひらの上で踊らされてきたようなものなのでした。
アリ・アスター監督にとっては、母親は自分を支配しようとする強大な敵なのでしょう。
ある意味、そんな敵の支配を覆すための唯一の武器が、あの恐るべきクリエイティビティなのかもしれません。
逆に言えば、これだけのクリエイティビティを持たずに成長してしまった人は、ボーのように母親に翻弄されつづけることしかできないのかも。。。
作品情報
『ボーはおそれている』(179分/アメリカ/2023年)
原題:Beau Is Afraid
公開:2024年2月16日
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場:全国にて
原案・製作・監督・脚本:アリ・アスター
製作:ラース・クヌーセン
音楽:ボビー・クーリック
出演:ホアキン・フェニックス/ネイサン・レイン/エイミー・ライアン/パーカー・ポージー/パティ・ルポーン/スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン/ゾーイ・リスター=ジョーンズ/カイリー・ロジャース/ヘイリー・スクワイアーズ/ドゥニ・メノーシェ/マイケル・ガンドルフィーニ/リチャード・カインド/アルメン・ナハペシャン
Official Website:https://happinet-phantom.com/beau/
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