舟を編む

2012年の本屋大賞第一位獲得、さらに2012年の文芸書年間ベストセラー第一位となった三浦しをんの小説「舟を編む」松田龍平主演で映画化した映画『舟を編む』

今回松田龍平が演じるのは、ネット社会で言う所の“コミュ障”的な、本オタク、言語オタクのマジメ青年・馬締光也(マジメミツヤ)くん。
立ち居振る舞いから歩き方まで、普段の印象とはガラッと変えたなりきりぶりに、彼の役者魂を感じます。

1995年から2010年まで、いろいろな意味で時代の移り変わりを、一人の辞書編集者の成長を通して描いた静かで爽やかな一作です。

<STORY>
出版社・玄武書房の辞書編集部では、ベテラン編集者の荒木が定年退職を迎えていた。荒木の代わりの新編集者て、変わり者として有名な27歳の馬締光也が選ばれる。馬締は監修担当の言語学者・松本、先輩社員・西岡、契約社員・佐々木らと共に“今を生きる辞書”として「大渡海」の編纂を進めていく。ある日、馬締が暮らしている下宿やに大家のタケさんの姪・林香具矢が現れる。月の光の下で香具矢に会った馬締は、一目で彼女に恋をする…。

<Cheeseの解説>
小学生の頃から、折に触れてひいてきた“辞書”。
最近はウェブの辞書を利用することも多いですが、紙の辞書の安心感は、他には代えがたいものがあります。

この映画『舟を編む』は、新人辞書編集者・馬締くんが見出し語24万語を収録する中型辞典(広辞苑や大辞林と同じようなサイズ)を編纂する15年にも及ぶプロジェクトの過程を描いています。

「用例採集」という言葉を集める作業、「見出し語選定」という集めた用例の中から辞書に載せる15万語の言葉を選ぶ作業、「語釈執筆」という見出し語に語釈をつける作業、「レイアウト」という原稿をくみ上げていく作業、「校正」という完成レイアウトをプリントアウトしてゲラに校正を入れていく作業。
辞書作りはこれらのプロセスを経て進んでいくそうなのですが、この一つ一つに気の遠くなるような膨大な作業時間がかかっているようです。

本作は、そんな辞書作りの過程を通して、馬締くんという一人の不器用な男性が成長していく物語です。
本オタク、言語オタクでいろいろな言葉を知識として知ってはいたものの使いこなす方法を知らなかった彼が、辞書作りを通して様々な人と触れ合い、言葉を本当に使いこなせるようになるのです。

彼を取り巻く人びとも、個性派揃い。

オダギリジョー演じるいかにもバブルっぽいチャラ男の先輩・西岡、加藤剛演じる辞書作りに一生を捧げる言語学者・松本先生、小林薫演じるベテラン辞書編集者・荒木、伊佐山ひろ子演じる無口ながらも優しい辞書編集部の契約社員・佐々木、黒木華演じる辞書編集部の新入り編集者・岸辺。
そして、渡辺美佐子演じる馬締の暮らす下宿の大家・タケさんに、宮崎あおい演じるタケさんの孫娘で馬締の運命の女性である香具矢。

馬締は彼らに影響を受けたり与えたりしながら、変化し、成長し、15年という長きにわたるプロジェクトをやり遂げていくのでした。

物語のオープニングの1995年は、まだバブルの名残があるころ。
オダジョーのチャラ男のスーツな着こなしや、池脇千鶴演じる女性社員のソバージュヘアに時代を感じる人も多いはず。
若い観客にとっては、オフィスのデスクにパソコンがないことなども、信じられないかもしれません。
私が新卒で入社したのは、この1995年からそう遠くない時代ですが、それでも一人に一台パソコンはあったからなあ。。。

そして15年後の2010年。
オフィスには一人一台のパソコンが用意され、原稿の書き方なども進化を遂げています。
1995年には27歳だった主人公の馬締くんも、白髪が目立つようになっていたり…。

でも、仕事の仕方は進化し、精神や肉体は変化を遂げていても、彼らが“辞書作り”という仕事に懸ける情熱や意欲は変わってないのです。

一人の若者が運命のプロジェクトと出会い、そのプロジェクトを完成させるまでの15年を描いた本作。
時代を経て“変わるもの”、“変わらないもの”が持つそれぞれの素晴らしさを見事に映画化した一作だと思います。

こういう作品を、1983年生まれ、若干29歳の石井裕也監督が、ベテランスタッフたちを指揮しながら35ミリフィルムで撮りあげたというのは、この作品の根底に流れるテーマを見事に具現化しているなあ。。。

『舟を編む』(133分/日本/2013年)
公開:2013年4月13日
配給:松竹、アスミック・エース
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
原作:三浦しをん
監督:石井裕也
出演:松田龍平宮崎あおいオダギリジョー加藤剛黒木華渡辺美佐子池脇千鶴鶴見辰吾伊佐山ひろ子八千草薫小林薫又吉直樹麻生久美子宇野祥平波岡一喜森岡龍斎藤嘉樹
公式HP:http://fune-amu.com/

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