【映画レビュー】人生スイッチ / Relatos Salvajes
“Wild Tales”という英題のこの映画『人生スイッチ』。
6つの短編映画からなるオムニバス映画です。
映画の冒頭、サバンナのような大地に暮らす、様々な野生動物たちが映し出されます。
「人間なんて、一皮むけば結局は動物と同じじゃない?」
脚本・監督を手がけたダミアン・ジフロンの、そんな肩をすくめる動作が目の前に浮かんでくるような、皮肉たっぷりな、でもどうしようもない人間への愛をも感じられるような、要注目の一作です。
STORY
同じ飛行機に乗り合わせたモデルと音楽評論家。話しているうちに、彼らは共通の知り合いがいることに気づく。その他も乗客も、皆、その男を知っていた。その男の招待で、皆その飛行機に乗り合わせていたのだ…。ある女性の働くレストランに、父親を自殺に追いやった高利貸しの男が来店。ウェイトレスがコックの女にそのことを打ち明けると、コックの女はその高利貸の料理に猫いらずを入れてしまう。そこい高利貸しの息子がやって来て…。
解説
『オール・アバウト・マイ・マザー』のペドロ・アルモドバルがその才能に惚れ込んだ、アルゼンチンはブエノスアイレス生まれの新鋭監督、ダミアン・ジフロン。
2005年の『Tiempo de valientes』を気に入ったアルモドバルは、本作『人生スイッチ』の脚本を読み、すぐにプロデューサーとして参加することを決めたそうです。
そして出来上がったこの作品、アルゼンチンで入場者400万人超という驚異の動員で歴代興収第1位を記録、第87回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたということで、ダミアン・フリンの才能、そしてペドロ・アルモドバルの審美眼は確かだったということになりますね。
「おかえし」
「おもてなし」
「エンスト」
「ヒーローになるために」
「愚息」
「HAPPY WEDDING」
上記、6つの短編で、ダミアン・ジフロンは本能をむき出しにした人間たちの姿を、ユーモアたっぷりに描き出しています。
これらの物語に登場するのは、あるスイッチを入れてしまった、困った人々。
彼らはそれぞれのきっかけで、感情を解き放ち、本能のスイッチを入れて人生を違う方向に進めてしまいます。
南米アルゼンチンが舞台なだけあって、もうみんな激しい激しい。
日本人のように遠慮したり我慢したりすることはせず、怒りにまかせてそのまま行動してしまうのです。
彼らは愚かといえば愚かだけれど、人間らしいといえばとても人間らしいのかもしれません。
6編からなるこの作品ですが、人によってどの作品が心に残るかは、様々でしょう。
個人的には、最後のエピソード「HAPPY WEDDING」がお気に入りです。
人生の絶頂の日に、夫となる人の裏切りを知り、傷つきすぎた花嫁は、ナイフのように触るもの皆傷つける危険な存在となります。
そして負の感情をすべて解き放ち、本能だけの存在になるという。。。
ある意味、うらやましいくらいの花嫁のブチ切れっぷり、素敵でした。
それにしても、“事実は芸術を模倣する”などとも言いますが、この映画のパステルナーク氏のエピソードを観て実際に起こったある事件を思い出す人も多いのではないでしょうか。
“人生スイッチ”を押すのは、映画の中だけにしてほしいものですよね。。。
作品情報
『人生スイッチ』(122分/アルゼンチン=スペイン/2014年)
原題:Relatos Salvajes
英題:Wild Tales
公開:2015年07月25日
配給:ギャガ
劇場:ヒューマントラスト有楽町、シネマライズほか全国にて順次公開
監督・脚本:ダミアン・ジフロン
製作総指揮:ペドロ・アルモドバル
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
出演:リカルド・ダリン/リタ・コルテセ/ダリオ・グランディネッティ/オスカル・マルティネス/レオナルド・スバラーリャ/エリカ・リバス/フリエタ・ジルベルベルグ/マリーア・マルル/モニカ・ビリャ/セサル・ボルドン/ワルテル・ドナード/ナンシー・ドゥプラア/マリーア・オネット/オスマル・ヌニェス/ヘルマン・デ・シルバ/ディエゴ・ベラスケス/ディエゴ・ヘンティレ
Official Website:http://jinseiswitch.gaga.ne.jp/
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