【映画レビュー】ジャッキー・コーガン / Killing Them Softly
二人のオトコたちが、どうでもいいことをえんえんとしゃべり続け、カメラはバストアップの切り替えでしゃべっているオトコたちを押さえていきます。
そして、どうでもいいことをしゃべっていたはずが、いきなり核心をつくような鋭い発言が飛び出し、そのオトコたちの関係が変化していく…。
ブラッド・ピットが凄腕の殺し屋に扮した映画『ジャッキー・コーガン』は、そんな不思議な映画です。
なぜそんなことが起こるのかは関係ない。大事なのは秩序とバランス。
圧倒的なパワーでその場を支配し、空気を作っていくオトコ。
そして弱者を“彼への優しさから”殺していくオトコ。
それがブラッド・ピットの演じるジャッキー・コーガンなのです。
STORY
2008年、ニューオリンズ。出所したばかりのフランキーとラッセルは、ある中年男から持ちかけられ、賭場で掛け金を強奪する。賭場はマーキーという男が仕切っているのだが、マーキーはかつて自分の賭場で強盗を仕組み、金を着服した過去があった。このトラブルを解決するため、ジャッキー・コーガンという殺し屋が派遣される。ジャッキーはマーキーを痛めつけるが、マーキーは犯行を認めない。その頃、ある情報がジャッキーの耳に入り…。
解説
ジョージ・V・ヒギンズの小説「Cogan’s Trade」を原作とするこの映画。
実はこの小説は1974年に書かれたものです。
監督のアンドリュー・ドミニクはこの小説を読んで、そのプロット、セリフの数々、そしてキャラクターに魅せられて映画化を決意したのだそう。
20年間ボストンで検察官をしていたジョージ・V・ヒギンズのリアリズムたっぷりの小説は、まさにアメリカ社会の縮図。
彼の小説で描かれている40年前のアメリカ社会は、映画の舞台となっている2008年と、根本的なところでは何も変わっていないのです。
資本主義経済の中、人は金に執着し、犯罪組織が裏社会を仕切り、その社会を裏切ったり利用しようとしたものには、徹底的な粛清が行われる。
そして生き残るのは、裏で糸を引く者と、一部の強者のみ。
しかし、その強者も何のきっかけで弱者に転落するかわからない…。
本作でブラッド・ピットが演じジャッキー・コーガンはまさに“現在の”強者。
そして、ジェームズ・ガンドルフィーニ演じるミッキーは、“過去の”強者の象徴と言えるでしょう。
バラク・オバマとジョージ・W・ブッシュの大統領選が白熱する2008年を経て、アメリカはどこに向い、資本主義はどこへ向かうのか。
ジャッキーのやり方は、いつまで通用するのでしょうか。
そして、彼はいつまで頂点にいられるのでしょうか。。。
別コラム
作品情報
『ジャッキー・コーガン』(97分/アメリカ/2012年)
原題:Killing Them Softly
公開:2013年4月26日
配給:プレシディオ
劇場:TOHOシネマズみゆき座ほか全国にて
原作:ジョージ・V・ヒギンズ
監督・脚本:アンドリュー・ドミニク
出演:ブラッド・ピット/リチャード・ジェンキンス/ジェームズ・ガンドルフィーニ/レイ・リオッタ/スクート・マクネイリー/ベン・メンデルソーン/サム・シェパード/スレイン/ヴィンセント・カラトーラ/マックス・カセラ
公式HP:http://jackie-cogan.jp
関連商品
Happinet(SB)(D) (2013-10-02T00:00:01Z)
¥
Happinet(SB)(D) (2014-11-05T00:00:01Z)
¥900
Lakeshore Records (2012-11-13T00:00:01Z)
¥2,733
早川書房
売り上げランキング: 39,940
写真フォトスタンド APOLLO ()
¥3,220