【映画レビュー】WANDA/ワンダ / Wanda
マルグリット・デュラス、イザベル・ユペール、ソフィア・コッポラ……。
世界の名だたる才能たちを魅了した1970年の映画『WANDA/ワンダ』。
1970年の第31回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞し、2017年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されたこの作品が、製作から50年以上の時を経て、また日本でも公開されます。
映画作家・俳優のエリア・カザンの妻である女優のバーバラ・ローデンが自ら監督・脚本・主演を務めて製作したこの作品。
50年の時を経て、女性は意思決定の力を持つことができたのだろうか……。そんなふうに思わせてくれる、社会のなかでの女性の在り方について考えさせてくれる映画です。
STORY
ペンシルバニア州で暮らす主婦のワンダは、育児放棄を原因に炭鉱夫の夫から離婚を言い渡される。裁判所で夫の言うがままに離婚を了承したワンダだが、職もなく、金もない。行きずりの男にも逃げられ、映画館で居眠りをした隙になけなしの全財産も盗まれてしまう。困り果てたワンダは、あるバーで出会った男とホテルでベッドを共にするが、その男はバーの店主を殺した強盗犯だった。ワンダはデニスと名乗るその男と、共に逃避行に出る……。
解説
この作品でバーバラ・ローデンが演じている主人公・ワンダは、一見何を考えているかわからない女性です。
アメリカのペンシルバニア州にある炭鉱町で暮らす主婦・ワンダは、カーラーをつけたまま外をウロウロし、離婚裁判の場でもそのまま。
夫に「子どもの面倒も見ず、家事もしない」と離婚を申し立てられても、「夫がそうしたいならそれでいい」とあっさり離婚に同意します。
ビールを奢ってくれる男性と寝ては置き去りにされたり、映画館で爆睡してなけなしの全財産をすられたり。
犯罪現場に足を踏み入れても、それと気付かずに犯人にビールをねだったり。
さらには、その男と寝て、その男の逃避行に付き合わされる羽目になったりと、どこまでも流されるような人生を送る女性なのです。
この作品を見ている間、実は私はワンダの意思のなさにイラついていました。
しかし、見続けているうちに、ワンダに意思がないのではなく、ワンダが意思を持つことを剥奪されて生きてきた女性であることに気づくのです。
だから、その状況に合わせて、男についてこいと言われればついていき、逃げろと言われれば逃げ、バーに誘われればバーに行く……。
それはまさに、自分の人生を選択するという経験したことがない人間が、未来を考えることなく、その場の状況に合わせて生きる姿、そのものでした。
そう考えると、ワンダは、1970年代という時代に、抑圧されて生きてきた女性の姿を象徴しているのだ……。
そう気づいた時に、この作品の持つ奥深さに気づきました。
製作から50年の時を経ても、未だ色褪せない魅力を放つ映画『WANDA/ワンダ』。ぜひこの機会にスクリーンで観て欲しいと思います。
作品情報
『WANDA/ワンダ』(103分/アメリカ/1970年)
原題:Wanda
公開:2022年7月9日
配給:CRÉPUSCULE FILMS
劇場:シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開
監督・脚本・出演:バーバラ・ローデン
制作協力:エリア・カザン
出演:マイケル・ヒギンズ/ドロシー・シュペネス/ピーター・シュペネス/ジェローム・ティアー
Official Website:https://wanda.crepuscule-films.com/
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