【映画レビュー】悪人伝 ／ 악인전

ギャングスターと警官、悪魔のような連続殺人鬼の息詰まる追走劇を描いた韓国映画『悪人伝』。
一癖も二癖もあるキャラクターたちがずらりと並び、己の欲望とプライドをかけて熱い戦いを繰り広げます。

カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門で喝采を受け、シルヴェスター・スタローン製作でハリウッドリメイクが決定しているというのも頷ける、バイオレンス・アクションです。
悪人しか出てこない圧の強い画面に目が離せない、韓国ノワール映画の傑作と言えるでしょう。

マ・ドンソク兄貴、やっぱり最高！　この毒気の強さが癖になり、マブリー中毒になりそうです。。。

アメリカで体育学を学び、ボディビルダーやフィットネス・トレーナーとして活躍していたというマ・ドンソク兄貴。
この映画『悪人伝』ではそんな兄貴の重めのパンチや激しい格闘、そして相撲取りのように筋肉のたっぷりつまった見事なボディを堪能することができます。

この映画、そんなヤクザなマブリー兄貴と熱血刑事のいっぷう変わったバディムービー。
なんせヤクザと刑事、そもそもが相容れない存在。しかし“殺人鬼を捕まえたい”という二人の利害が一致して、なぜか仲間になってしまうのです。
とはいえ、お互いに“殺人鬼を捕まる”先に目指すところは別々。
殺人鬼を自分の手でぶち殺して復讐したい兄貴と、連続殺人鬼を捕まえて法の裁きに委ねたいというチョン刑事、お互いに、相手の組織力と科学捜査能力を利用しながらも、隙あらば相手を出し抜こうと、虎視眈々とチャンスを狙っているのです。

チョン刑事を演じるキム・ムヨルも、肉体改造をして撮影に挑んだそうですが、やっぱりあのマブリー兄貴の存在感と比べると、いかんせんまだまだ。とは言え、熱く生意気な若造感たっぷりで、マブリー兄貴と好対照を見せています。

そして、この警察＆ヤクザから追われるサイコパスな連続殺人鬼を演じるキム・ソンギュも、なんとも薄気味悪く、何を考えているのかわからない名演を見せます。
一見イケメンのようでありつつも、その三白眼やこけた頬の不気味さったら…。見事な役作りと言えるでしょう。

ギャングスター、警官、連続殺人鬼、それぞれに見事な面構えで観客を魅了する映画『悪人伝』には、キャラクター造形、俳優の演技、獰猛なアクションなど、様々な魅力がつまっています。
脚本も担当したというイ・ウォンテ監督、これまではプロデューサーとして映画に関わってきたそうで、この作品が監督第2作目とのこと。2作目にしてこれだけアクの強い作品を作れるなんて、なんて素晴らしい。
イ・ウォンテ監督、これからの活躍にも期待したいと思います。